約 301,247 件
https://w.atwiki.jp/hamiyalog/pages/69.html
ウィル 20 52 テステス フィア 20 58 そういえば、流行りっぽかったのでフィアースもPTメンバーへの心象を追加しときました http //cdice.sakura.ne.jp/sw2_cs/data/fallmoon2.html ノクス 20 58 ありがとですーw うれしいw みてますよーw あとキタローアンテナ生えましたね ルセリナ 20 59 おー 書きたいなあ と思って書いてない人 フィア 20 59 知力が足りないんでアイテムで補強しないとね >キタロー そういやGMに相当品ありかかくにんしたっけな ノクス 21 00 たよりにしてますよw ルール的な有利が無ければ大丈夫じゃないかなーとは思う ウィル 21 01 ……気遣い?あるのか?ウィル (´・ω・`) ルセリナ 21 02 じゃあルセリナの防具もプレートアーマー相当のワンピースに……(防護点7) GM高梨千里 21 03 いいですよー マテル 21 03 (いずれ機会を見て(もふもふ)しておきたいに見えました) ノクス 21 04 GM それはいと言ってはいけないところだ (笑) フィア 21 04 第2話2日目夜とかツンデレ的な気遣いを感じた >気遣い ウィル 21 04 ( 〃▽〃) フィア 21 05 一応、金属鎧はそれ着けたままじゃ寝られないってペナルティがあるから、ワンピースにしちゃうとそこら辺無視できちゃいそうでアレですね ルセリナ 21 05 さすがにしないよw ウィル 21 05 そこでオールタイムアーマーですよ GM高梨千里 21 05 いや、むしろプレートアーマー相当のワンピース(ワンピース型プレートアーマーともいう)を着ているルセリナさんおもしr……可愛らしいなと ルセリナ 21 06 うん オールタイムアーマーはそのうちGMに確認しようと思ってた そのうち更新するかもなので、まだ先とですが ウィル 21 06 ワンピース (鉄糸で編まれてる)とか? GM高梨千里 21 06 ワンピース(合金製)とか フィア 21 06 ワンピースに板金貼り付けてあるとか マテル 21 07 寸胴鍋みたいw >合金 マテル 21 07 セイバーの鎧ってどうなんでしょうね データ的に見たら ウィル 21 08 ……ルセリナの脳内イメージが途端にバケツ鎧ウーマンに GM高梨千里 21 08 wwwww フィア 21 08 歩くたびにガションガションと音がするのか ルセリナ 21 08 がっちがちの金属鎧ですぞ (´・ω・`) ウィル 21 08 駆動音しそう (メカ的な フィア 21 09 ブッピガン ノクス 21 09 面白いじゃなくて (笑) あきらかに見た目や構造がおかしいものを許可すると後で事故が起きますよ (笑) GM経験者として忠告しておきますよ GM高梨千里 21 10 はい、気をつけます。 マテル 21 10 http //luckycity.up.n.seesaa.net/luckycity/image/blog2180.jpg?d=a1 イメージ図……? フィア 21 10 なんだこれw ウィル 21 10 わあ GM高梨千里 21 10 なんですかこれww ノクス 21 11 ww マテル 21 14 【マテル】HP32/32 MP38/38 フィア 21 15 【フィアース】HP42/42 MP13/13 ウィル 21 15 【ウィル】HP27/27MP40/40 マナチャ5/5 ルセリナ 21 17 【ルセリナ】HP71/71 MP24/24 ウィル 21 18 ……HP、ルセリナとの差が酷いw マテル 21 18 や、役割が違…… フィア 21 19 タフネス+頑強ってエグいよね ルセリナ 21 19 頑強にタフネス持ちですもの 素の生命は低めですよ? ウィル 21 19 アレックスにすら負けてる (´・ω・`) フィア 21 21 ウィル、生命力一桁ですからねえ GM高梨千里 21 21 今から長文を貼りますので、よろしくお願いします 終わりました ルセリナ 21 24 さて、始まってから 依頼の内容次第で追加で買い物をしようと考えていたのですが……(笑 マテル 21 25 新人向けの依頼しか来ない的な感じなんですかね? チュートリアル的に育ったら次の店に行くというか GM高梨千里 21 25 そんな感じですね マテル 21 25 だから子犬なるほど ルセリナ 21 26 まあ進行で本拠地が変わるなんて、よくあることですものね。 ノクス 21 27 この辺のことがあるので、一応、GMとしてはこういう形の話ならまちスタートをお勧めはしますよ (笑) GM ほっとスタートはそうそう扱うものではないのです (笑) GM高梨千里 21 29 なるほど、今度は気をつけます ルセリナ 21 40 というわけで、アレックスの代理振りやりますね(宣言 フィア 21 41 よろしくお願いします。 ノクス 21 41 よろしくw マテル 21 41 よろしくお願いします ウィル 21 42 よろしくお願いしますー GM高梨千里 21 42 よろしくお願いします、いつもすみません 今から長文を貼ります フィア 21 56 ほい ルセリナ 21 56 ハイ 後ろ暗い過去なんてない人 ウィル 21 57 はーい 後ろ暗いというか前世の黒歴史 (´・ω・`) GM高梨千里 21 57 終わりました ウィル 22 01 行きかけてたじゃないか神官!w マテル 22 02 な、何のことかしら? (今日バニッシュ……だめだノクス巻き込む……) ウィル 22 07 ……アレックスいたらセンスエネミー撃てたのう フィア 22 08 アレックス居るよな? GM高梨千里 22 08 いますよ ウィル 22 10 中身がいたら、すぐ撃てたの (´・ω・`) マテル 22 11 めんどくさい女…… (´・ω・`) ライフォスってナイトメアもアウトでしたっけ ウィル 22 12 ひとによる 基本はあんまり好きじゃない マテル 22 14 1d100 00ほど ダイス 22 14 マテル - 1d100 = [80] = 80 マテル 22 14 よかった…… ウィル 22 22 ノクさんや……ウィリアムのこと、頼むわ ルセリナ 22 23 そも一般市民はほぼ蘇生に答えないはず…… ウィル 22 23 リモートドール使ってもいいかな! フィア 22 24 よっぽど未練があるなら応じるかも? ってレベルですっけ。幼児で応じるほどの未練があるかどうか…… マテル 22 27 (さて動かないウィルに何してやろうかしら) ウィル 22 28 【ウィル】HP27/27MP36/40マナチャ5/5 おいばかやめろ神官 (真顔 マテル 22 30 えー 「っ」(吹き出しそうになるのをこらえた音) ウィル 22 35 後で神官にテロをすることが決まったもよう マテル 22 36 理不尽 ウィル 22 37 ……ライオンの名前はトーマスにしよう (由来は秘密 マテル 22 41 愉悦(後のことを考えていない フィア 22 46 現状と特に関係はないけど、このパーティで酒飲める人ってどれくらい居るんだろか ウィル 22 46 少し飲める マテル 22 47 1d100 01ほど雑魚 00ほどうわばみ ダイス 22 47 マテル - 1d100 = [39] = 39 マテル 22 47 弱い方 ルセリナ 22 47 ダイスの女神様に聞きましょうか 1d100 下戸 枠 絡み 泣き 寝る ダイス 22 48 ルセリナ - 1d100 = [15] = 15 ルセリナ 22 48 飲めませんでした(残念 マテル 22 50 1d2 飲酒経験 あり なし ダイス 22 50 マテル - 1d2 = [2] = 2 ウィル 22 51 飲むのも冒険テンションだぞ神官w フィア 22 51 フィアースは生命力的に強い方っぽい。 ウィル 22 51 テンションってなんやねん マテル 22 51 飲んだこと無いから調子に乗る可能性がが ウィル 22 53 イッキ飲みはさせんぞ医者的に ノクス 22 53 何かもうあまりに不審過ぎて何処から突っ込んだものかわからないなwww 友好関係は任せるうw ウィル 22 53 せやね!w ルセリナ 22 53 ええ、お任せしますw 私達は警戒担当で( ウィル 22 54 ウィル本人は子供めんどくせぇしか思ってない ( ・∇・) フィア 22 54 じゃあ俺は突っ込んで罠にかかる担当だな! ノクス 22 54 考証だけしてくれたらそこは請け負うよ (笑) 交渉 マテル 22 55 知らぬ間にどっか行って迷子になればいいんですね ウィル 22 55 殴るぞ神官 (スパーク詠唱しつつ マテル 22 56 物理じゃないじゃない! フィア 22 56 一行で言動が矛盾してるのだが ウィル 22 56 (* ̄ー ̄) ノクス 22 57 (笑) なんかもう、ひどいwww <表 マテル 22 58 怪しすぎて ノクス 22 58 何もかも信用できない (笑) ウィル 23 03 これ、外は見捨てられてるのか ノクス 23 14 実に面倒くさくなっている (笑) ウィル 23 16 うむ 待った、不死殺しが穢れダメならそのナイトメア娘が蘇生したのはなぜや? フィア 23 20 そもそもこの家族の事情が全く分からんですね。事情を探る理由がないので聞いてないけど ウィル 23 20 ……んじゃ、聞こうか? フィア 23 21 頼んだ。だが、穏便に頼むw ウィル 23 22 ウィリアム流穏便 (о´∀`о) マテル 23 22 (本体をはたく ウィル 23 22 痛い マテル 23 23 分体もはたかれた フィア 23 23 ダブルアタック食らってるな ウィル 23 23 Wで痛い フィア 23 28 何だ何言われそうになったんだ ノクス 23 28 後で効いてもいいよw 大したことではない (笑) ウィル 23 30 そういえばティダンはシーンの夫か ルセリナ 23 31 ええ 私、私の為したいように為す 行動派ヴァルキリーですので 色々お任せしますね!( きっと知能:低い フィア 23 38 ファラリスさんの囁き受けてませんかねそれ ルセリナ 23 39 やりたいことやります (`・ω・´) マテル 23 41 GMすいません、地図的なものはあとで公開されるのでしょうか? 地名とか出てきたので今後もいろいろ出てくるのかと GM高梨千里 23 41 はい、公開します。 マテル 23 41 了解です ルセリナ 23 45 何でしょう、この複雑さ 子離れできない親のような心境なのでしょうか……むむむ ノクス 23 46 www マテル 23 46 はじめてのおつかい ウィル 23 49 あの音楽流さなきゃ ルセリナ 00 02 私の夜色さんを理解して信用してくださる方が増えるのは嬉しいのですけれど、それはそれで寂しい気がするのです。 マテル 00 02 は、はい フィア 00 02 お、おう ウィル 00 03 …… マテル 00 03 (ウィルの面白いところが見れて楽しかったです) ウィル 00 04 絶対に仕返しする フィア 00 04 高梨さん明日早かったのかな? マテル 00 05 なんでや!ちょっと叩いたりつねっただけやろ! かもですね ウィル 00 08 砂糖テロでは済まさぬ…… マテル 00 11 何テロだろうか…… ウィル 00 12 スタンクラウド マテル 00 13 痺れさせて何する気よ変態ハイマン ウィル 00 14 砂糖に埋める フィア 00 14 マテルの砂糖漬け……? ルセリナ 00 14 ウィルさんそんな趣味が…… 性趣向に口出しするのは無粋ですけれど、食べ物で遊ぶのは感心しませんよ? ウィル 00 15 砂糖の良さを知らしめるのだg ( ・∇・) マテル 00 16 リュシアさーん ウィル 00 18 らめぇ フィア 00 20 ブランクのデータ見てみたけど、この辺りになるとドロップ品の値段すごいな ルセリナ 00 20 出目が走らないとあれですけどね…… ウィル 00 21 お金が増えるのはいいことでふ す フィア 00 21 幸運の首飾り+変転+トレハンで修正値3までは行ける…… 出目4以下か11以上か ウィル 00 22 いずれスカウトセージ5にして補正+3にするべ
https://w.atwiki.jp/bakiss/pages/711.html
とにもかくにもセラスはようやく落ち着く事が出来た。 再度着替えたTシャツとスウェットパンツはそれでもきつめではあったが、若干の伸縮性のおかげで 着ていられなくもない。 セラスはフウとひとつ溜め息を吐きながら傍らのベッドに腰掛けた。 それに対し、まひろは実に慌しく私服に着替えている。 生まれて初めての珍客来室に、うっかり寄宿舎における重要な事実を忘れていたからだ。 「私、ご飯食べてくるね。あんまり遅いと怒られちゃうし。すぐ戻ってくるから」 既に夕食時間を大幅に過ぎている。ほとんどの生徒が食事を済ませて自由時間を満喫しているだろう。 このままでは本当に下げられてしまい、夕食抜きとなってしまう。 寄宿舎のメニュー表を暗記し、三度の食事にも間食にも至上の幸せを感じるまひろにとって、 夕食が食べられないのは相当の痛恨事だ。 あるナチス親衛隊が第二次世界大戦下のワルシャワで「デブは一食抜くと死ぬ」という名言を残したが、 まさにそれに近い。 そんな、まだまだ花より団子の子供っぽい彼女の様子に、セラスは苦笑を浮かべる。 「急がなくてもいいよ。ゆっくり食べてきて」 「はーい!」 セラスの声を背に、少しの時間も惜しいとばかりにパーカーの袖を通しながら自室の戸を開けるまひろ。 しかし、彼女の前進は、顔や胸への軽い衝撃の中で阻まれた。 戸を開けたすぐ先に何者かが立っており、その身体にぶつかったのだ。 目の前の人物は今まさにノックをせんとばかりに軽く握った拳を胸の高さまで上げていた。 日曜大工にピッタリな薄汚れたグレイのツナギ。短髪のボサボサ頭に無精髭。 銀成学園寄宿舎管理人のキャプテン・ブラボーである。 「あっ! ブラボー!!」 「何だ、まだ――」 言葉が途切れる。 まひろにも容易にわかった。ブラボーの表情が滅多に見られない、険しいものになっているのが。 まひろが冷汗三斗の思いで後を振り返ると、そこにセラスの姿は無かった。 この時にセラスが見せた身のこなしは見事なものだった。 ベッドに腰掛けて完全に気を抜いた状態から、まひろの上げた「あっ!」という一声に反応し、 入室の際と同じ超スピードで瞬時に押入れへと飛び込んだのだ。 それはとても常人の眼に映るものではない。せいぜい眼の錯覚くらいにしか思わないだろう。 だが、キャプテン・ブラボーは違う。 今でこそ呑気な管理人だが、元は錬金の戦士であり、戦士長だった男だ。 更に、防御専門の己が武装錬金の為に鍛え上げたのは、筋力や俊敏性だけではない。 敵の攻撃や能力、戦局を見抜く“眼力”もそれに含まれる。 そして、ブラボーの眼は捉えていた。まひろの背後、人間離れした素早さで押入れに飛び込む人影を。 ブラボーは視線を押入れに向けたまま、まひろの肩に手を置き、諭すように言う。 「さあ、早く夕飯を食べに行きなさい。」 一方のまひろは見ていてかわいそうになるほどの慌てぶりだ。 ブラボーの言葉は頭に入らず、いつの間にか消えてしまったセラスを探してキョロキョロしながら―― 「あ、あのね! 誰も隠れてないし、誰もいないよ! ホントだよ!」 ――などと不自然極まりない言い訳を繰り返している。 これ以上部屋に入るなとばかりに鬱陶しくまとわりつくまひろを、ブラボーはキッと見つめた。 寄宿舎内に人外の化物が潜んでいるという非常事態。しかも、察するにこの部屋の主の方から 招き入れた節があるのだからタチが悪い。 彼女を傷つけないように、怯えさせないように細心の注意を払いながら、ブラボーは言い渡す。厳しく、簡潔に。 「いいから、行くんだ」 その言葉が耳に入った瞬間、まひろの動きはピタリと止まってしまった。 普段あまり怒らない人間が怒ったらどんなに怖いかという良い見本になったのだろう。 「……はい」 まひろは泣きべその一歩手前の声で素直に返事をすると、うなだれて部屋から出ていった。 名残惜しそうに幾度も自分の部屋の中を振り返りながら。 部屋に一人残ったブラボーは緊張と警戒心を全身にみなぎらせ、押入れの前に仁王立ちとなっている。 “まひろに招き入れられた”や“まひろを傷つけていない”等の事実は安心していい理由にならない。 笑顔で人間を欺いた後に邪悪の本性を現す化物など掃いて捨てる程いる。 「一度しか言わない」 彼の経験上、というよりも職務上、中に潜んでいるのはホムンクルスと当たりをつけていた。 遥か昔から数え切れない程の戦いを錬金戦団と繰り広げ、この銀成市でも“蝶野攻爵”の作り出した ホムンクルスや共同体“L・X・E”が跳梁していたのだ。 すべてのホムンクルスが月に渡ったと言われても、そうにわかに信用出来るものではない。 現にどう考えても人間とは思えない化物が、眼前で息を潜めているではないか。 「俺は錬金の戦士、キャプテン・ブラボーだ。敵意が無いのなら大人しく出てこい。そちらから 攻撃してこない限り、こちらも手を出さない事は約束しよう」 実はこの時、彼に勝算と呼べるものは何一つ無かった。 たとえ鍛え上げた肉体と研鑽を重ねた格闘技術のみを武器に戦ってきたとはいえ、武装錬金の無い 生身ではホムンクルスにダメージを与える事は一切出来ない。 加えて、半年前に再起不能に近い重傷から生還するもその後遺症の為に、強大だった戦闘力は 全盛期から遠くかけ離れたものとなっていた。 それでも尚、勝機無き戦いに挑む理由は、彼が生徒達の平和な暮らしを預かる寄宿舎管理人であり、 キャプテン・ブラボーだからだ。 生徒達を、子供達を、化物共の毒牙に掛ける訳には絶対にいかない。 力及ばぬまでも命を捨てて、皆が逃げ出す時間だけでも稼ぐつもりだった。 「五秒だけ待つ。それ以上の沈黙は敵意があるものと見なすぞ」 両の拳を満身の力で握り締める。 ――それは意外な程に早かった。 五秒のカウントを始める前に押入れの戸が静かに開いたのだ。 中から出てきたのは妙にサイズの合っていない服を着た外国人女性。 対象のすべてを見極める“心眼ブラボーアイ(掛け声・ポーズ無しの簡易バージョン)”を以ってしても 動物型ホムンクルスが人間形体をとっているようには見えないし、ましてや人間型ホムンクルスにも見えない。 しかし、人間とも違う。 聴覚を最大限まで研ぎ澄ませても、呼吸音や心臓の鼓動は聞こえてこない。 ブラボーは軽く困惑していた。 「お前は何者だ? 人間じゃないのは確かなようだが」 俯き気味に視線を下げた彼女は先程のまひろのリプレイの如く、泣きべその一歩手前の声で オドオドと答える。 「あ、あの、名前はセラス・ヴィクトリアです。えっと、その、信じてもらえないかもしれないけれど…… 私、吸血鬼なんです……」 「吸血鬼……?」 予想外の返答だった。 今まで錬金の戦士として幾度と無く人造生命体ホムンクルスと遭遇し、戦いを重ねてきたブラボーも、 吸血鬼などというものは初めてお目に掛かる。 とはいえ、化物そのものの素早さや生体反応の無い身体を目の当たりにしているのだから、 嫌でも信じざるを得ない。 「……いや、信じよう。セラス、君はどこから来たんだ? 何故、こんなところにいる?」 ブラボーの口調が幾分か柔らかくなっている。 決して油断している訳ではない。ではないが、こうまでビクつきながら素直に応対されると どうにも調子が狂ってしまう。 セラスはセラスで、目の前の男が実力においてもバックボーンにおいても只者ではないであろう事を 漠然と理解していた。 自分達と同じ“裏”の存在、“闇”の存在。 ならば、ある程度は正直に話した方が良いのではないか。そう思っている。 「それが、その……。私はイギリスの“王立国教騎士団”という機関に所属しているんですが、 ある日、眼が覚めて棺から出てみたらどういう訳か日本にいて……。私にも何がどうなってるのか、 よくわからないんです」 “イギリス” セラスの言葉を聞いた途端、ブラボーの胸に若き日の闘いの場面が去来する。 あれは七年前―― 『ようこそ、錬金戦団大英帝国支部に!』 『この私の武装錬金こそが最新鋭! 最強の破壊力を誇るのだ!』 『見て下さい! 見て下さいブラボーサン! 僕、こんなに強くなりましたよ!』 『私に殺されるまで、誰にも殺されるなよ?』 ――ほんの僅かの間、ブラボーの意識は銀成学園寄宿舎から離れ、“防人衛”として記憶の回廊を彷徨っていた。 そして、それらの記憶が甦ると同時に、改めて納得する。 “吸血鬼を殺す為の組織が存在するのならば、吸血鬼の存在もまた至極当然なのだ”と。 短い記憶の旅路から戻ったブラボーは話を続ける。 「その先は“困っているところをあの子に拾われて、この寄宿舎に来た”といったところか」 「そうです……」 相変わらず俯いたままのセラス。 ブラボーは口元に手をやり、指先で無精髭を細かく擦る。 「ふうむ……――」 嘘は言ってないのだろうし、少なくとも自分やまひろ、他の寄宿舎生に害意は持っていないのかもしれない。 それでも“この事”は聞いておかなければならない。彼女が吸血鬼である以上、“この事”だけは。 「――……君には“食事”が必要だろう。日本に来てからどれだけの人間を襲った?」 その質問を聞くや否や、セラスは顔を上げ、潤んだ瞳をいっぱいに開いてブラボーを見つめ返した。 「私、誰も襲ってません! 確かに血は飲みたくなるけど、でも絶対に飲みません! 今までも一度だって 飲んだ事は無いんです!」 否定、というよりも抗議の色合いが強いセラスの訴え。 彼女が何故、血を飲まないのか。吸血鬼が血を飲まなければどうなるのか。 どちらもブラボーにはわからないが、そこにセラスの明確な“意志”がある事はわかった。 「そうか……。失礼な事を言ってすまなかった」 謝罪には答えず、セラスは再び顔を伏せる。 「私……出ていきます……。まひろちゃんには『優しくしてくれてありがとう。嬉しかった』 って伝えておいてください……」 ひどく暗い声だ。最早、泣き声ですらない。 部屋の隅に置いてあるリュックサック、銃器とその弾倉(マガジン)が山程入った物騒なリュックサックを 急いで手に取ると、セラスは部屋を去ろうと足早にブラボーの横を通り過ぎる。 早く出ていかなければ、という思いが強いのか、自分が身にまとっているのはHELLSING機関の 制服ではなくまひろの私服だという事にも気づいていない。 そんなセラスにブラボーがわざとらしい咳払いと共に声を掛けた。 「ンンッ! あー、それで君の今後だが」 「……?」 不意の言葉にセラスは立ち止まって振り返り、キョトンと不思議そうに彼の顔を眺めた。 腕を組んだブラボーは彼女に初めて笑顔を見せながら、あえて回りくどく伝える。 「俺の組織はイギリスの方にも支部がある。君の帰国に協力してもらえるように、上に掛け合ってみよう。 その間、この部屋の押入れで大人しくしていてもらうが、それでもいいかな?」 セラスはこの言葉の真意を汲み取るのに少しの時間を要した。 やがて、ブラボーが何を伝えたいかを理解すると、すぐにこれ以上無いくらいの満面の笑みを浮かべた。 「ありがとうございます!」 彼女の頭の中は喜びでいっぱいだ。 “ゆっくり身体を落ち着けられる場所が出来た”のも嬉しいのだろうし、“イギリスへ返る見込みがついた”のも 安心なのだろう。 しかし、最も大きな割合を占めていたのは“まひろちゃんと友達になれる。あの少しおかしな、 でも優しくて楽しい女の子と”という思いだ。 一頻り喜びを噛み締めたセラスではあったが、実はあともうひとつだけ心配な事が残っていた。 まひろとの共同生活を送る上で一番大切な事だ。 「あ、でも……」 「わかっている。君が吸血鬼だという事は、まひろには秘密にしておこう。そうだな、“日光アレルギー” とでも言っておくか」 それに銀アレルギーとニンニクアレルギーも追加して彼女に説明しなければ、と考えながら、 笑顔のセラスは一際弾んだ声をブラボーに返した。 「はいっ!」
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/640.html
212 :しまっちゃうメイドさん [sage] :2007/03/07(水) 00 03 03 ID kiMII5Zh 「えっ、これって…」 放課後…、否命は自分の下駄箱に入っていた白い封筒を持って固まっていた。その封筒は団栗の代わりにハートを持った可愛らしいリスのシールで封されている。 何が書かれているかは明白であった。 その封筒を手に否命は嬉しいやら、恥ずかしいやらで頬を真っ赤にしていた。しかし、その表情はマンザラでもなさそうである。 (こういうの書く人、本当にいたんだ…。こんな方法をとってくるなんて、書いた人はロ マンチストなのかな?うん、きっとロマンチスト!だって、このリス可愛いぃー!!あと で、このリスのシールを何処で買ったか聞いとかなきゃ…て、えっ…こんなシールを使うなんて…もしかしてこの手紙を書いた人って女の子…なのかな?) 否命は辺りを見回し、人がいないのを確認するとリスのシールを破かないように丁寧に封を切った。否命の人生で始めての経験に、否応なく心臓の鼓動が高まっていく。 「「突然の、手紙で驚かしてしまったと思います」」 書き出しの文句を読んで、否命は思わず乾いた笑い声を上げた。 (やっぱり、この字って女の子の字だよね。だけど、なんか、見覚えがあるような…) 「「しかしながら、私の意を伝えるには最良の方法と思いましたので、このような手紙を書いた次第です」」 (恥ずかしがり屋さん…なのかな?) 「「大変申し訳ないのですが、今日の放課後、宜しければ…」」 (呼び出し?何処だろう…?体育館裏は汚いし、屋上は閉鎖されているし…) 「「スーパーで、 ジャガイモ200グラム 人参5本、 レバー500グラム 買ってきていただけませんか?本来ならば、私が行くべきなのですが、今日は大会前につき部活が長引きそうなので、お嬢様が行って下さらないでしょうか? 浅原沙紀」」 否命は拍子が抜けて、やはり乾いた笑い声を上げた。同時に自分がからかわれた事に気づいて少し不機嫌になる。 213 :しまっちゃうメイドさん [sage] :2007/03/07(水) 00 05 06 ID kiMII5Zh 「もう、沙紀さんも…。はぁー、ビックリした」 否命は部活に入っていないが、沙紀は部活に入っている。 高校に入った時、沙紀はこれまで部活に入っていなかったのだが、幼い頃から剣道をやっ ていた源之助に誘われて剣道部に入ったのである。その際に、勿論否命も誘われたが、否 命は自身の「ある事情」のため、源之助の誘いを断り「だったら、私も…」と断りそうになった沙紀を半ば強引に剣道部に入れたのであった。 否命の「ある事情」は、どうしても家に一人という状況でないと具合が悪いのだ。そのため、否命はどうしても一人になれる時間が欲しかったのである。 そういうわけで、否命は一人で沙紀よりも早く家に帰るのが日課になっている。 それにしても、このような手紙は心臓に悪い…と否命はもう一度、手紙を見直した。沙紀が確信犯であることは明らかであった。 っと、そこで否命は手紙の端っこに書かれてある文章に気付いた。 「「P・S 今夜はお嬢様の好きなカレーですよ♪」」 否命の頬は、既にニンマリとホッペが緩んでいた。沙紀にからかわれた不機嫌は何処へ行ったやら、否命は自然に足取りも軽く商店街へと向っていった。 214 :しまっちゃうメイドさん [sage] :2007/03/07(水) 00 06 50 ID kiMII5Zh スーパーでの買い物を終え、否命は商店街の道を鼻歌交じりに歩いていた。16時30分 という時刻なので、商店街は人のざわめきで賑わっている。しかし、その中でも一際、大 きなざわめきがあった。そのざわめきは自分のほうへ向ってくるように、大きくなっていく。否命は、なんだろう?…と、立ち止まり、後ろを振り返りざわめきを見ようとした。 その瞬間であった。 「どいて!!」 「えっ?」 否命がその声に気付いた時、否命は自分の身体に強い衝撃を感じた。否命はその声の主に弾き飛ばされる形で道端に尻餅をつく。 「悪いわね」 その声の主は早口でそういうと、後ろを振り返ることなく脱兎の如く走っていった。 どうやら、その声の主がざわめきの中心のようだった。 それから少し遅れて、二人組みの男が声の主を追うように走ってきた。 「待ちやがれ!」 「この餓鬼が!」 立ち上がった否命は、またもやその二人組に弾き飛ばされてしまった。 「悪いな」 その二人組みも、後ろを振り返ることなく先ほどの人物を追っていく。 「誰か、その餓鬼を捕まえてくれ!そいつは「スリ」だ!」 男の一人が叫んだ。 途端、ざわめきが大きくなる。 みるまに逃走する人間の前に人垣が出来上がり、もはや逃げ切れる雰囲気では無くなった。 しばらく、逃走していた人間は人垣の前をオロオロと廻っていたが、直ぐに二人組みの男に追いつかれてしまう。 前を歩いていた否命も、しばらくするとその光景に出くわした。 「さぁ、金を返して貰おうか?」 二人組みの男が、満足そうに言った。 「なんのことかしら?」 そういって、逃走していた人間は顔を上げた。その顔を見て、思わず周囲を囲んでいた野次馬の口から、おお!っと一斉に嘆声がこぼれ出る 215 :しまっちゃうメイドさん [sage] :2007/03/07(水) 00 07 43 ID kiMII5Zh それは女であるはずの否命も見とれてしまうほどの、美貌の少女であった。 年は丁度、否命と同じくらい・・・16、17に見える。肌は程よくうっすらと黄色がのって おり、その背中までかかる長い髪はまるで濡れた黒檀の如く艶かしく輝いていた。それが 杏子のようにふくよかな頬と、桃のように品良く切れている顎、そして桜を含んだような朱色の唇を、一層際立たせている。 驚くほど、端正な顔立ちであった。 しかし、その少女の瞳は鳳凰のように凛としていながら、何処か濁っているような、鉛の如く鈍く光っているような、そんな汚さがあった。ただし、それを差し引いてもこの少女はこの世のものとは思えぬ美しさをたたえていた。 「とぼけるなよ、お前が俺から掏った財布のことだ!」 男の怒気を孕んだ声を受け流すように、少女はやれやれ…というように肩を竦めて見せた。少女の口元は、こんな状況に陥ったというのに薄く笑いが浮かんでいた。 「貴方が何を言っているのか分からないわ」 「俺は見たんだよ!お前が、俺の連れから財布を掏るのを…」 「貴方、それを本当に見たの?」 「だから、お前を追ったんだよ」 「そう…、それは困ったわね」 「だったら早く出しな」 「いえ、貴方を眼科に連れて行くべきか、精神科に連れて行くべきか…、この場合は、見えないものが見えたのだから、精神科のほうが適当かしら。いえ、やはりこの場合はむしろ眼科のほ…」 「この餓鬼!」 そう言って、男が少女の胸倉を掴もうとする。その男の手を、 「触らないで頂戴」 と、少女はバシッと払った。 216 :しまっちゃうメイドさん [sage] :2007/03/07(水) 00 08 59 ID kiMII5Zh 男の顔が赤くなる。二人組みの男はどうみても堅気の風体ではなかった。恐らく地元の地回りなのだろう。顔には経験によって刻まれた凄みがある。 その男の、怒りに顔を歪めた表情は凄みが浮き上がり、他を本能的に怯えさせる何かがあった。しかし、その表情を見ても、少女は薄ら笑いを止めようとしない。 「お前は、自分の立場が分かっていないようだな」 「貴方は、自分の夢と現実の境界が分かっていないようね」 「ほぅ…」 呟くよりも早く、男は少女を殴った。 周りで成り行きを見ていた野次馬が息を呑む。 「金を出すんだよ、糞餓鬼!」 「だから、知らないって言っているでしょう?」 少女の顔から笑みが消えていた。代わりに冷たい刃物のようなものが、その顔に張り付いている。男も殴っても尚、口を割ろうとしない少女に苛立ちを募らせていく。 男と少女の間に窒息しそうな沈黙が流れていた。 「何やっているんですか!?」 その沈黙は、駆けつけてきた警官によって破られた。野次馬の誰かが通報したらしかった。 「どうしたんですか?」 警官が問うた。 「どうもこうもねぇ、この餓鬼が…」 「そこの男が!!!!」 言いかけた男の声を遮るように、少女は大声を出した。その大声に周りが水を打ったように静かになる。それを確認すると、少女は警官に向き直って言った。 「突然、奇声を上げたと思った次の瞬間には私に襲い掛かってきたの。そして、私が逃げたら追いかけてきた挙句に、私をスリといって詰ったのよ」 「この野郎、シャアシャアとぬかしやがって!」 「違う?」 「お前が、実際に俺の財布を盗んだ事がな!」 「丁度いいわ。お巡りさん、私のポケットの中を調べてくれる?」 「なっ…!?」 その言葉に男は少女の魂胆が分からず怪訝な顔をしたが、そう言われれば引き下がるほかなかった。 少女と男の会話で、事情を察した警官は、 「では、失礼します」 と言って、少女の前にしゃがみこんだ。 「しっかり、調べて頂戴」 少女の顔には再び、不敵な笑みが浮かんでいた。 217 :しまっちゃうメイドさん [sage] :2007/03/07(水) 00 10 04 ID kiMII5Zh 警官は、少女の脇の下に手を入れると、ポンポンと少女の身体を叩きながら手を下ろしていく。別に、何も異変は無かった。 次に警官は少女に、ポケットをひっくり返すよう要求した。少女がポケットをひっくり返すと、そこから黒い財布が出てきた。 「これが…?」 男は無言で頭を振った。 そして、少女のポケットからはそれ以外のものは出てこなかった。少女は自分のシャツも捲ってみせる。やはりそこには何も無い。 「糞ッ!」 血を吐くように男が叫ぶ。 「盗まれたのは…?」 「盗んでいないわ」 少女が苦笑交じりに言う。 「財布だよ」 男が悔しげに言った。 その男と少女の会話を聞いて、警官は焦れたように言った。 「どうですか、一旦、交番までいって双方の話を…」 「「「交番」!!?」」」 その警官の提案を聞いた二人組みの男と少女の声が重なる。三人の表情は呆れる程、豹変していた。少女の顔からは笑みが消えうせ、男の顔からは凄みが消える。三人の目にはいずれも怯えの色が浮かんでいた。 「疑いが晴れたんだから、もう私から話すことなんてないわ」 「俺達も、金が掏られたぐらいで交番にいくほど暇じゃねぇんだよ」 「ああ、そういうこった。悪かったな、糞餓鬼…、俺の目が悪くてよ」 「耳も遠いのでしょう?」 「あっ?」 「だって、私が「やっていない」って言ったのが聞こえなかったものね」 「そうだよ!悪かったな耳も遠くて…」 「顔も汚くて…」 「顔も汚くて…」 「口も臭くて…」 「口も臭く…、こいつッ!舐めてるのかッ!!」 そういって少女を殴ろうとする男を、別の男が目で「止せ!」と合図する。 憤る男達を尻目に少女は悠々と、その場を離れていった。 218 :しまっちゃうメイドさん [sage] :2007/03/07(水) 00 10 37 ID kiMII5Zh その成り行きを見物しながら、否命はある種の奇妙な感覚に囚われていた。どうも、さっきの少女は男に絡まれながらも、しきりに自分のほうをチラチラ見ていたような気がするのだ。それにどうも、身体の一部に違和感がある…。 気のせいかな?…と否命は自分に言い聞かせ、帰路を急いだ。 (はぁ、それにしてもすっかり遅くなっちゃった。早く家に帰って「アレ」をしないと沙紀さんが帰ってきちゃう。うん、そうだ、今日は近道を通ろう) 否命は不意に商店街を出ると、大通りを曲がり裏路地を通っていった。普段否命は、裏路地は汚いので通らないのだが、やはり時間は惜しかった。 っと、不意に否命は裏路地の半ばで違和感の原因に気がついた。自分の制服のポケットが異様に膨らんでいるのである。ポケットに入っているものはよっぽど分厚いらしく、その長方形の輪郭が布地越しにくっきりと浮かび上がっていた。 否命は恐る恐る、ポケットの中身を取り出しみた。 否命のポケットから出てきたのは、万札で今にもはちきれんばかりの茶色い札入れであった。 突如、否命の脳裏に少女が自分にぶつかってきた時の映像が流れる。 「これって…」 「そう、「私の」財布よ」 否命の振り向いた先には、あの少女がニッコリと笑って立っていた。
https://w.atwiki.jp/kairakunoza/pages/2610.html
Imitation-Love 第二話に戻る 「かがみ先輩?おはようございます。こなたお姉ちゃんなんですけど、昨日の夜、急に体調を崩してしまって……ええ、そうです。 今日は学校をお休みしますので……はい、お姉ちゃんに伝えます。はい。失礼します」 ゆたかちゃんがかがみに、こなたちゃんが学校を休む事を伝える電話をしている。 さっきは学校にも電話をしていた。 これでこなたちゃんが『体調を崩して学校を休む』ということになり、事情を知らない人たちは風邪でもひいたと思うだろう。 それでいい…… 本当のことなど、とても外には漏らせない。 特に、かがみやつかさには…… コンコン 私はドアをノックする。 ノックというものは、在室している人間から入室許可を得るための場合が多い。 私もそのつもりでこうしてドアをノックしている。 この部屋の主に入室の許可をもらうために。 しかし、私にはわかっていた。 この部屋の主は入室の許可など出さない。 いや、出せない。 私はそれをわかっていて、あえてノックした。 この音が少しでも届いてくれる事を願いながら…… 「こなたちゃん…入るわよ」 ガチャッ 一応部屋に入る旨の声をかけ、扉を開く。 室内は暗かった。 カーテンは閉じられ、朝日の陽気はほとんど遮られている。 私は全てのカーテンを手早くあけて太陽の光を部屋に迎え入れた。 さらに窓をあけ、よどんだ空気を入れ替えた。 だが、部屋を満たす重苦しい雰囲気はあまり変わらない。 「こなたちゃん……」 私はベッドの上にいる部屋の主に声をかけた。 「…………」 返事は返ってこない。 「こなたちゃん、おはよう。もう朝だよ?天気もいいし、風も気持ちいいよ」 「…………」 私は努めて明るい声で話しかけるが、やはり返事はない。 こなたちゃんはベッドに仰向けになっていて、肩まで布団がかけられている。 だが眠っているわけではない。 こなたちゃんの目は開かれていて、ときどきまばたきもする。 だがその瞳にはまったく光は宿っておらず、なにも見えていないように見える。 「…………」 表情も能面のように無表情で、何度話しかけても返事はおろか反応すらしてくれない。 私がここにいることすら、気付いていないように思えてくる。 「ね、こなたちゃん。今日の朝ごはんはね、こなたちゃんの好きなチョココロネだよ。いっぱいあるから、好きなだけおかわりできるよ」 「…………」 「おなかすいたでしょ?起きようよ。ね……こなたちゃん」 「…………」 当然のごとく無反応…… わかっている。 だけど、それでももしかしたらと希望を捨てられないのが人の性なのだ。 「朝ごはん食べて、学校行こうよ。つかさもみゆきちゃんも…かがみも待ってるよ」 “かがみ”の名を出した瞬間、こなたちゃんの唇が微かに動いた気がした。 「……、……、………」 こなたちゃんの唇が“か”“が”“み”と言ったかのように形を変える。 だがそれだけだった。 声が発せられたわけでも、それ以上こなたちゃんが動き出す事もなかった。 そして、瞬きをするだけだったこなたちゃんの目から、 つうっと、一筋の涙が頬を伝って枕を濡らした。 「―――っ!!」 だんっ!! 私は弾かれたように部屋を飛び出した。 バンッ!! 勢いよく扉を閉め、ドアから少し離れた壁にもたれかかって座り込んだ。 「はあっ!はあっ!……っ!!」 大声で叫びだしたい衝動に駆られるが、頭を抱えてうずくまり感情を押し殺す。 私にはそんなことをして逃げるなんて、許されてはいない。 感情を爆発させるのは被害者の権利だ。 加害者である私が現状に対して怒りをおぼえる事など、どうして許されていようか…… 「……なにやってるんですか?こんな所で」 氷のように冷たい声が胸に突き刺さる。 顔をあげるとそこには、お盆を持ったゆたかちゃんが冷め切った眼差しで私を見下ろしていた。 お盆にはお粥とスープがはいった器がのせられていた。 ゆたかちゃんと視線が合うと、彼女は何も言わずに通り過ぎ、こなたちゃんの部屋の前にお盆を置いてドアをノックした。 「お姉ちゃん、ご飯もってきたよ」 当然部屋の主からの返事はない。 「お姉ちゃん、おはよう。朝ごはんだよ」 「……無駄よ」 かまわずノックを続けるゆたかちゃんに私は思わず話しかけていた。 「私も同じ事をしたわ。でも、気付いてさえもらえなかっ……」 「こなたお姉ちゃん、入るね」 ゆたかちゃんは私の言葉を完全に無視して部屋に入ろうとする。 「だから、無駄だって……」 ぱちん 「…………」 私は最初、なにが起こったのかわからなかった。 右頬に感じる熱い痛みと、ゆたかちゃんが怒りに満ちた目で私をにらんでいる事から、私はゆたかちゃんにたたかれたんだと分かった。 「……許さない」 ゆたかちゃんは今にも泣きそうな顔と、恨みに満ちた声で私を罵倒した。 「よくもお姉ちゃんを……!返してよ!お姉ちゃんを返して!明るくて元気なこなたお姉ちゃんを返してよ!!」 一息にそれだけ叫ぶと、ゆたかちゃんは茫然自失となっている私を放っておいてこなたちゃんの部屋に入っていった。 ☆ ☆ ☆ 私とのエッチの後、こなたちゃんは壊れてしまった。 薬が切れて目を覚ましたそうじろうさんとゆたかちゃんは、動かなくなってしまったこなたちゃんを必死に介抱し病院へ運んだが、 こなたちゃんが正気を取り戻す事はなく、医者の話では強い精神的ショックが原因で心を閉ざしてしまっている。 それもかなり重症で、へたをすれば何年もこのままの状態が続くかもしれない、とのことだった。 眠っているか、起きていても周りの人に対してまったく反応する事のない抜け殻のようになってしまった。 そうじろうさんは、「こなたが目を覚ますまでこの家にいろ」とだけしか言わなかった。 どっちみち、こうなってしまっては柊家にもどることなどできるはずもない…… こんなことをかがみが知ったら、実の親であってもどれだけの憎しみを向けられるかわからない。 こなたちゃんに受け入れてもらえずこんなことになってしまい、娘のかがみにまで嫌われたりしたら、私は何を支えにして生きていけばいいのか…… かがみは、若かった頃の私に良く似ている。 こなたちゃんがかがみのことを好きだと知ったとき、私は思った。 『もしも私が17歳だったら、こなたちゃんは私のことを好きになってくれたかもしれない』と。 だが時の流れは残酷だ。 時間の流れは不可逆の流れ。遡る事は許されない。 そう思っていた私に、天使が舞い降りた。 あるいは、悪魔だったのかもしれない…… いや、それはないか。 “アレ”は悪魔ではないだろう。 なぜなら“アレ”は確かに私に言った。 『姿を似せて想い人を振り向かせても、その愛情は自分にむけられるものではない』と……。 つまりはその通りだったわけだ。 若い頃の姿。 つまり、かがみの姿を手に入れることができれば、こなたちゃんを振り向かせる事ができるかもしれないと思った。 でもこなたちゃんは、私を愛してはくれなかった……それどころかあんなにもハッキリと拒絶していた。 つい頭に血が上ってしまい、こなたちゃんの身体だけでなく心まで汚してしまい、結果、私の手でこなたちゃんを壊してしまった。 私が間違ってたんだ…全て、私の責任なんだ…… 「……なにやってるんですか?こんな所で」 さっきも同じことを同じ人に言われた気がする。 「廊下に座り込まれると、邪魔なんですけど」 私を見下ろすゆたかちゃんの視線は先ほどと同様に絶対零度の冷たさを孕んでいた。 「お話があります。私の部屋に来てください」 「え?」 予想してなかった言葉に、私は戸惑いを隠せなかった。 「…………」 「あ…待って」 私は慌てて立ち上がり、そのまますたすたと歩いて行ってしまうゆたかちゃんのあとを追った。 ☆ ☆ ☆ 「どうぞ」 冷え切った声とは裏腹に、温かそうな湯気をたてた紅茶が私の前に差し出される。 「心配しなくても、変な薬ははいってませんよ。貴女とは違いますから」 強烈な皮肉だが、今の私にはなにも言い返せない。 ゆたかちゃんは汚いものでも見るような眼で私を睨みながらティーカップを口へと運んだ。 「っ!」 が、驚いたようにカップから口を離した。 紅茶が思った以上に熱かったのだろうか。 「っ……ふんっ!」 私の視線に気付いたゆたかちゃんは顔を真っ赤にして目をそらした。 「くすっ」 その様子があまりに可愛らしく、私は不謹慎にも笑ってしまった。 ゆたかちゃんは直ちにキツイ視線を私に投げかけるが、そこには先ほどのような冷たさも強い怒りも感じなかった。 それ以上に、すねたゆたかちゃんの表情は可愛かった。 「ほんと…似てますね。こなたお姉ちゃんの気持ちも理解できます」 「え?」 ぽそっとゆたかちゃんが呟いた言葉を、私はうまく聞き取れなかった。 ゆたかちゃんはコホンと咳払いをして佇まいをただすと、私の目をまっすぐに見つめて言い放った。 「こなたお姉ちゃんのこと、どうするつもりですか?」 かすかに緩んだ空気が一気に張り詰めたものに変わった。 「今のお姉ちゃんは廃人同然です。お医者さんも見離すほどに重症です。まさかこのままでいいなんて、思ってませんよね?」 「…………」 「この状況を招いた張本人として、どのようにお考えですか?」 皮肉と棘が満載の言葉を、私は針のムシロに座ったような心地で聴いていた。 「そうは言っても…お医者様でもどうしようもないのに、私達にできることなんて……」 「あるじゃないですか」 ゆたかちゃんは私の言葉を遮ってあっさりと言い切った。 「多分、これしか方法はないと思いますよ。そして、これはみきさんがやるべきことです」 「……私に……何をしろというの?」 「はぁ………」 ゆたかちゃんは深いため息をつき、「わかってるくせに……」とつぶやいた。 「みきさん、かがみ先輩を連れてきてください」 「っ!!」 「それしかないでしょう。これでダメなら手の打ちようがありません。 わかってますよね?こなたおねえちゃんはかがみ先輩のことが好きです。そしてかがみ先輩もこなたお姉ちゃんのことを想っています。 壊れてしまったお姉ちゃんを救うことができるのはかがみ先輩だけです」 「…………」 ゆたかちゃんの言うとおりだと思う。 壊れてしまったこなたちゃんに私達の声はとどかない。 だがこなたちゃんの想い人であるかがみならば話は別だ。 かがみならば、こなたちゃんを目覚めさせる事ができるかもしれない。 だが……かがみを連れてくるということは、私がしたことをかがみに話さなくてはならない。 私がかがみにとって大切な人を、冒し、蹂躙し、踏み躙ったことを話さなければならない。 そして、本来それは私の口から話すべきこと。事件を起こした者として当然の責任だ。 だけど、きっとかがみは私を憎むだろう。 面と向かってどれほど辛辣な言葉を浴びせられるか…… 「かがみ先輩が怖いですか?」 私の心の中を見透かしたようにゆたかちゃんは言った。 「みきさんがしたことはこなたお姉ちゃんはもちろんですが、かがみ先輩にとっても酷い事です。 人の心を冒涜する行為です。 どれほど酷い仕打ちを受けようと文句は言えませんね。 けど…わかってます?こなたお姉ちゃんはあのときから寝たきりで、食事もほとんど摂っていません。身体は衰弱していく一方なんです」 事件が起こってからまだ二日程度しかたっていない。 けどたった二日で、こなたちゃんの身体はみるみるうちに生命力を失っていった。 入院して点滴などをうければ多少はマシになるかもしれない。けどそれでは根本的な解決にはならない。 こなたちゃんが正気を取り戻すのが遅くなれば遅くなるほど悪い結果にしかならない。 悩む余地も、迷う時間もないのだ。 でも…… 「私が、間に入ってあげましょうか?」 「えっ?!」 あまりにも都合のいい言葉に、私は思わず自分の耳を疑った。 「私がかがみ先輩に事情を話して連れてきます。こなたお姉ちゃんが正気を取り戻したら、みきさんは土下座でもなんでもしてください。 白い目で見られるのは避けられませんが、万事うまくいった後ならマシにはなるはずです」 「ゆたかちゃん……」 「勘違いしないでくださいね。貴女がもたもたしているうちにこなたお姉ちゃんの辛い時間が延びていくのが嫌なだけですから」 「それでも……ありがとう……」 「ただし」 救われたような心地の私に、ゆたかちゃんははっきりとした声で言った。 「条件があります」 ☆ ☆ ☆ シャワーを浴びた私は、はだかにバスタオルを一枚巻きつけただけの姿で、ゆたかちゃんの部屋の前に立っていた。 「…………」 因果応報とはこのことだろうか…… まさか自分のしたことがこのような形で返ってくるとは…… 私の髪型は、こなたちゃんを襲ったときと同じ、ツインテールになっていた。 私とかがみの間に入るためにゆたかちゃんが出した条件……それは、『こなたお姉ちゃんにしたことと同じことを、自分にもしてほしい』 というものだった。 つまり、かがみのフリをして自分を抱いてほしいということ…… 恋心の対象でない人を抱くなんて不本意極まりないけど、これからのかがみとの関係やこなたちゃんのことを思えば、ゆたかちゃんがだした条件を飲まざるを得なかった。 それに、こんなことを言い出してくるということは、ゆたかちゃんはかがみのことを…… コンコン 私は意を決してドアをノックした。 「どうぞ、入ってください」 入室の許可を確認し、私はドアを開けた。 がちゃっ 部屋の中には予想通りというか、私と同じではだかにバスタオルを巻いただけのゆたかちゃんがいた。 「……かがみ……先輩」 切なそうな吐息混じりの声がゆたかちゃんの唇から漏れた。 「先輩……先輩……先輩っ…かがみ先輩!!」 ゆたかちゃんは勢いよく抱きついてきて、私の胸に顔を埋めた。 「ぁぁ……先輩……」 私と身体を密着させながら、すぅっと胸いっぱいに息を吸い込み、うっとりとした表情でゆたかちゃんは呟く。 その姿を見て、ゆたかちゃんがどれだけ強くかがみを想ってきたかを知った。 そして姉として慕っているこなたちゃんへの思いとのジレンマでどれだけ苦しんできたのか…… その葛藤を思うと、私は目の前の少女が急に愛おしく思えてしまった。 私はゆたかちゃんの背中にそっと手をまわし、ゆたかちゃんを優しく包み込んだ。 ゆたかちゃんは「ぁぁ…」と小さく呟いて、より強く私の身体に抱きついた。 「先輩…大好き……大好き……かがみ先輩」 陶酔したように大好きと呟くゆたかちゃんの表情は、先日のこなたちゃんと重なるものがあり、私の胸を苛んだ。 つまり、ゆたかちゃんも魅入られたのだ。 こなたちゃんを誘惑した模造品の愛、イミテーション・ラブに…… ゆたかちゃんは抱きついていた力を弱め、少しだけ私から身体を離した。 「先輩……」 そして、身体に巻いていたバスタオルをはらりと床におとし、その幼げな裸身を差し出した。 「私を…抱いてください」 していることの大胆さとは裏腹に、その声はかすかに震えていた。 あまりの健気な様子に思わず彼女を抱きしめた。 強く…強く…自分の胸のなかを彼女でいっぱいにするように…… そして指でそっとあごを持ち上げ、ゆたかちゃんの唇を奪った。 「んっ……」 唇が触れている時間はほんの僅かのはずだったが、私達にはとても長い時間に思えた。 「どうして……?」 唇を離すと、ゆたかちゃんは困惑したような表情で私を見つめた。 私はそれを遮るように彼女の胸に触れた。 「あっ……あ」 ふくらみかけの小ぶりな胸をやわやわと揉みほぐしていく。 やわらかい乳房は私の手の中で自在に姿を変えて私を楽しませた。 「あ……ん……ん…ふっ……」 ゆたかちゃんの吐息に甘い響きが混じり始める。 蕾のような先端が少しずつかたくなりツンと自己主張をはじめる。 その蕾を人差し指でトントンとノックするように刺激した。 「や……っ、遊ばないで……んっ」 ゆたかちゃんはくすぐったそうに身をよじるが、嫌がっている様子はまったくない。 「んっ……は……あっ……ん…あ……先輩……」 乳首を中心に胸を弄りながらゆたかちゃんの顔をみた。 目をとじて頬を赤らめ快感に翻弄される彼女の姿はどこか背徳的で、その快感を与えているのが自分なんだと言う意識と相まって私を興奮させた。 私は目線を下へと移し、ゆたかちゃんのあそこを見た。 彼女のあそこはまだ毛も生えておらず、ピンクの割れ目があるだけだった。 そこはときどき切なげにヒクヒクと震え、かすかに開くたびに甘い匂いが私の鼻をくすぐった。 私は誘われるようにあそこに手をのばし、彼女の割れ目をそっと開いた。 「やっ……ぁぁ」 押し広げられた割れ目からトロリと蜜が溢れ、女の子の匂いが濃厚になっていく。 「やっ…恥ずかしいです……ああっ」 ゆたかちゃんが顔を真っ赤にして目を逸らすと、私は切なげに震えるクリトリスをそっと指で弾いた。 「はぅっ!んくっ……」 指先で優しく刺激してあげると、ゆたかちゃんの口からは甘い喘ぎ声が漏れて私はたまらない気持ちになる。 「あん……あっ……だめぇ……先輩……」 ゆたかちゃんの足がガクガクと震えだし、限界が近い事を知らせてきた。 そっとあそこから指をはなすと、私の指とゆたかちゃんのあそこを銀色の糸が結んだ。 「はぁっ……先輩……」 「ゆたかちゃん、おいで」 快感で意識が朦朧としているゆたかちゃんをベッドに誘うと、彼女はふらふらと夢遊病者のような危なっかしい足取りでベッドに近づき、ポフンと倒れこんだ。 ゆたかちゃんが寝転んだ事を確認して、私は身体を覆っていたバスタオルを取り払った。 「ふわぁ……」 私を見ていたゆたかちゃんがうっとりとしたため息をついた。 「かがみ先輩の……はだか……夢みたい……」 偽物だけどね、という言葉をなんとか飲み込んだ。 「先輩……」 私はゆたかちゃんの身体に覆いかぶさり、彼女の身体をギュッと抱きしめた。 「ふぁっ……先輩……」 ゆたかちゃんも私の背中に手をまわし、少しでも私の身体を感じようと力強く抱きしめた。 私は背中にまわしていていた手を下の方へと移動させ、ぐっしょりと濡れそぼっている秘所に指を滑り込ませた。 「あっあっ……や…だめぇ…ああっ……」 指を往復させるごとにゆたかちゃんが絶頂の階段を昇っていくのがわかる。 「先輩…かがみ先輩……ああっ、かがみせんぱぃ……」 私を抱きしめるゆたかちゃんの力が徐々に強くなっていく。 うわごとのようにかがみを求める彼女の声はとても甘く、私の心に強烈な罪悪感と虚無感をもたらした。 私は指の動きをより早くし、目の前の少女を頂へと導いていく。 「んああっ!先輩……私…私、イきそうです……イっちゃいますっ……ああっ!」 「いいよ……好きなときにイって、ゆたかちゃん」 「先輩……好きって…言ってください…愛してるって、言ってくださいっ……はぁっ」 少しだけ迷ったが、私は彼女の願いをかなえてあげる事にした。 「好きよ……ゆたかちゃん」 「はぁっ……もっと……先輩、もっと言ってください…んああっ」 「好きよ…大好き……」 ゆたかちゃんの耳元で何度も好きという言葉をささやいてあげる。 「くぅ……先輩……イク……イっちゃいます…ああっ!かがみ先輩!!」 「イって、ゆたかちゃん。イっちゃえ!」 私はとどめと言わんばかりに指の動きを早め、甘い言葉を囁き続ける。 「ゆたかちゃん、愛してるわ」 「ああぁっ!かがみ先輩!大好きっ!ああああぁぁぁぁぁっ!!!」 ゆたかちゃんの幼い身体がビクッと震え、秘所からドッと愛液が溢れ出した。 「あ……あふっ……あ…はぁ……はぁ……かがみ先輩……愛してます……先輩……」 絶頂の余韻で意識を朦朧とさせ意気も絶え絶えになりながらも、ゆたかちゃんはかがみへの愛を口にし続けた。 その言葉も気持ちも、かがみ本人にはまったく届いておらず、愛を囁いている相手でさえ偽者という現実が滑稽でもあり、酷く哀れでもあった。 せめて、今だけでも彼女の心が安らぐ事を願って、私はゆたかちゃんが落ち着くまでその身体を抱いて温めるのだった。 ☆ ☆ ☆ 小一時間ほどが過ぎ、私に抱かれるままになっていたゆたかちゃんは不意にその手を振り払い身体を起こした。 「……部屋から、出て行ってください」 ついさっきまで私の腕の中で甘い声をあげていた少女とは、まるで別人のように冷たい声でゆたかちゃんは言った。 「放課後の時間になったら、学校に行ってかがみ先輩を連れてきます。みきさんは先輩に見つからないように、外に出るか隠れるかしていてください」 「ゆたか……ちゃん……?」 ゆたかちゃんは一息にそれだけ言うと、私に背をむけて黙り込んでしまった。 その背中には、話しかけるな、というオーラが立ち上りそれ以上の会話を許してはくれなかった。 私はベッドから身を起こし、ゆたかちゃんの言うとおりに部屋を出ようとドアノブに手をかけた。 「ゆたかちゃん……」 私は彼女のほうを見ずにその名を呼んだ。 「…………」 返事はない。 無論期待してもいなかった。 だけど、言わずにはいられなかった。 「こなたちゃんのこと、お願いね。それと……」 ガチャッ ドアを開け、私は部屋の外に出ながら、彼女に聴こえるか聴こえないかくらいの声で呟いた。 「……ごめんね」 ガチャン 扉が閉まると同時に、部屋の中からゆたかちゃんの泣き崩れる声が聴こえた。 再びドアを開き、ゆたかちゃんを抱きしめたい衝動にかられながらも、私はその場をあとにした。 さすらいのらき☆すたファン氏に戻る Imitation-Love 第四話に進む コメントフォーム 名前 コメント 偽物でも良いと割り切って愛を求めるゆーちゃん…… 興味深い展開ですね。 続きをとても楽しみにしております。 -- 23-251 (2009-09-15 00 05 43) これは新しいな… -- 名無しさん (2009-09-14 15 28 11) なんとも凄い愛憎劇ですね とりあえず こなた復活EDに期待したいですが はてさてどうなることか…… -- 名無しさん (2009-09-14 13 13 57)
https://w.atwiki.jp/satou/pages/466.html
なにっ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3559.html
第三話 ヒトメボレの行方 翌日早朝。 部屋を出ると広間の椅子に中河が座って居た。 「おお、キョンか」 「よう、中河。随分早起きだな」まだ6時前だ。 「目が覚めたからな」 まあ、そうだろう。8時起床だから目覚ましをかける必要は無い。 「昨日は楽しめたか?」 「当然だ。雪合戦なんて何年振りだろうな」 「そりゃ良かった」 中河の向かいの椅子に腰を下ろす。 「大半が知らない奴だっただろ。窮屈じゃないかと心配してた」これは割と本心からだ。 「そんな事はない。皆愉快な奴だったからな」 俺は奴等が愉快過ぎてたまに頭が痛くなってくるよ。 「しかし、ほぼ一年ぶりに電話が掛かってきたと思ったら、いきなり雪合戦しないか?とはな…」 ほう。まさかお前から一般常識についての会話に持ち込もうと言うのか。 「その一年前に自分がしたこと覚えているか?」電波な文章読み上げやがって。 「ん、ああ、まあ、な…」 そりゃ覚えているだろうな。忘れるとしたら情報操作だ。 「長門さんには本当に申し訳ない事をした」 そう思うか。実は俺たちは原因を判っているのだが。 「長門は別に怒ってはいないぞ」多分だが。 「そうか。…よかったよ」 どうやらこいつも普通に戻ったようだ。思念体にアクセスすることはもう無いのだろう。 「どうだった?久々に見た長門は。」 俺の何気無いこの質問に黙り込む中河。何だ、この間は? 「…中河?」 「……綺麗だったよ」 俺は一瞬、かなり焦った。 「去年見た時よりずっと綺麗だった」 中河にまた妙な能力が蘇ったのかと思って。 「オーラ、とか神々しさ、とかそんな物じゃなかった」 しかし、その疑いは次第に晴れていった。 「今日一日同じチームで戦ってみて判った」 今の中河の感情が、本当に中河の感情だろう。 「俺は…多分、長門さんの事が…好きだ」 自信なさそうに言う中河。間違いなく本気だ。 「去年の事もある、やはり自信が無いがな」 違う、あれはお前のせいじゃ無いんだ。 「去年の事はもう忘れろ。…あれは仕方ない事だ」誰だってそう言うだろう。 「仕方ない事じゃないだろう。あんな失礼な事をしたんだからな」 中河はそう言い切った。 「…俺は勉強を続けるよ。例の夢物語を実現するつもりだ」 この男は本当に大人物になる。そう保証出来るだけの何かがあった。 「さて、一旦部屋に戻るか。もう少し眠れそうだ」 そう言って立ち上がり、中河は部屋にむかう。 その後すぐにハルヒが登場した。 その後すぐにハルヒが登場した。 無言でさっきまで中河が座って居た席に座る。 「…聞いていたのか?」 尚も無言で首を縦に振る。 俺も黙り込む。見事な静止画の完成だ。 ややあって遂にハルヒが口を開く。 「…去年中河君の将来設計、笑い飛ばしちゃった」 そりゃあんな文章聞いたら誰だって笑う。 「有希に一方的に告白して、翌日一方的に振ったからもっと程度の低い男だと思ってた」 俺もだ。もう原因も聞いたので誤解も解けたが、こいつには説明する訳にはいかない。 「彼を見直したわ。決めた!SOS団準団員に認定する!」 ハルヒが高らかに宣言した。俺も異論は無い。まあ中河が喜ぶかは解らないが。 「せっかくだし、このまま今日の作戦を練る事にしましょう!」 賛成だ。今日は古泉に雪玉を飽きるほどくれてやるつもりだからな。 そのまま集合時間まで戦略について議論した。7時頃には長門に九曜、喜緑さんも起きて来たので、そこで議論を打ち切った。危ない危ない、喜緑さんは敵チームだ。 二日目、第一セット 「逃がすかぁ!」 大声を上げながら喜緑さんを追い詰めるハルヒと随伴する俺。 この隙に会長、鶴屋さん、多丸さんが俺たちを包囲し、俺とハルヒに一斉攻撃。ここまでは昨日と同じ。 だが、しかし! 「うっ!?」「んのわっ!!」──今のは会長と鶴屋さんの断末魔。さらに… 「くっ…!」──今のが多丸さん。更に更に… 「…っ、やられましたね…」──喜緑さんをも仕留めた。 ……説明しよう。 一斉攻撃と同時に会長を中河、鶴屋さんを長門がそれぞれ背後からの奇襲で倒し、敵から放たれた雪玉には俺が盾となりハルヒを守る。 多丸さんには後方部隊から谷口・朝比奈さんを差し向け、喜緑さんはハルヒが倒す。 被害は俺一人と会長たち四人。完璧な作戦だろ?ここまではな。 「有希っ!中河君っ!」 何と伏兵国木田により主力二名があっさり倒されたのだ。これは予想外。 残念ながら俺はここで退場だ。 (キョン退場につきまして、ハルヒ視点でお送りします) あたしは国木田を射程距離に捉えた。 「よくも有希達を…!」 かなり凄みを効かせたが、国木田は平然と、「ふふっ、後ろを見てみなよ」等と言ってのけた。その言葉に素直に振り返ると… 後ろには谷口を牽制する森さん、その向こうに、がら空きのフラッグに近付く古泉君が見えた。 「試合終了、だよ」 国木田がそう言った、が…甘い。甘過ぎるわ。 古泉くんに黒い影が近寄る。古泉くんが振り返り驚愕の表情。そして黒い影に雪玉を当てられた。 「九曜ちゃん!ナイス!」言いつつ目の前の国木田に突然の速球を投げる。玉は見事に命中して国木田も退場。 これで残りは森さん一人! あたしは未だ抵抗を続ける森さんに、全力で雪玉を投げ込んだ。そして… 新川さんのホイッスルが試合終了を告げる。ハルヒが森さんを討ち取った。谷口組の勝利である。 「よっしゃあ!」谷口が勝鬨をあげる。 ハルヒが満面の笑みを見せつつ戻って来た。 「よくやった!ハルヒ!」 「当然よ!次も勝つわよ!」 そう言って最高の、眩しい位の笑顔を見せた。 その後の戦いは勝ったり負けたりが続き、昼食の後の第三試合でようやく古泉に俺からの会心の一撃を与える事に成功した。 今回、せっかくの雪山で、降雪量も申し分無い。雪合戦以外にも楽しむ方法はある。ハルヒがそう言い出したのは午後の2時頃だ。 例えば俺が小学生の頃は鬼ごっこのような遊び、通称『雪鬼ごっこ』もした。それをハルヒに伝えるとハルヒは、 「なかなか面白そうね…よし、それ採用!」 と明るく言った。 ルールは想像に任せる。この雪玉鬼ごっこをやるに当たって鬼は増やしていく方針に決定。 範囲は雪合戦コート4面に宿泊棟2棟を含む半径100メートル位。 最初の鬼は谷口、古泉、新川さんからスタート。 携帯も圏外ではなく、長門に喜緑さん、九曜もいるんだ、妙な事は起こらないだろう。 鬼のカウントダウンは一桁に入り、しかし俺は鬼から5メートル位の距離の壁の後だ。 俺は、この種目のプロだ。 人間心理の裏をかくのさ、普通まずは辺りを見渡すだろう? そして最初に目につくのは、遠くを逃げる朝比奈さんだ。 当然そちらを追う、と見せかけて、実はそうでも無い。 何せ逃げている人数だけで12人、4方向に三人ずついる計算だ。出来るならまずは強者を確保したいだろう。 更に俺が今潜んでいるのは谷口の左斜め後、最も安全な筈の方角だ。何故かって? 奴がとても単純、更に古泉と新川さんは集団を重んじる性格だからさ。 多分あいつは何も考えずに前方へと進軍する。つまり新川さん、古泉らを引き連れどんどん俺から遠ざかって行く。 何?敢えてここから離れなかった理由? 恐らく鬼達は、楕円形の範囲の端まで行った後、左右どちらかに進む筈だ。そのまま引き返しはしない。 ならば最初はここに潜伏、徐々に鬼達の進路を追跡するのが最も安全だ。 おっと、鬼がカウントを終了したらしい。……ここからが博打だ。 俺の予測は適中した。 離れていく鬼達。安心して溜息を吐く。 「見事な作戦でしたね」 そうでしょう。俺から提案する位です、自信あるんですよ。 「本当に新川、古泉を出し抜けるなんて思いませんでした」 いや、あれは谷口を出し抜いただけです。新川さんに勝った訳じゃな…い…? 「森さん、いつから其処に?」危うく悲鳴挙げる所だった。 「あ、迷惑なら離れますけど…」 迷惑だなんてとんでもない。孤独による不安感も無くなりますし、正直助かりますよ…… と、ここで携帯にメールが来た。古泉から? 【今、国木田君を確保しました。】 森さんにも同様のメールが届いたらしい。ならば事実か。……不味い! 「森さん、ここを離れましょう!」当然小声だ。 「え?」 「国木田は俺の動きを読み切っている!きっとすぐに戻って来るはずです!」…多分、二手に別れてだ。 その時近付いてくる足音に気付いた。もう一刻の猶予も無いだろう。「多分逃げ切れます…一気に走り去りましょう」 俺の提案に森さんも賛同した。 壁の裏から鬼と反対側に走る。谷口と国木田が10メートル程離れた所をこちらに歩いて来ていた。 「キョンと森さんだっ!」谷口が叫ぶ。しかし既に追い付ける距離ではない。雪玉を投げても掠りもしない。 「……逃げ切りましたね」 「そのようですね…先程は本当に見事な判断でしたね」 「俺は鬼ごっこは昔から得意だったんです。国木田とは小学生の時から戦って来ましたし」 今は宿泊棟裏に潜伏中……と、ここで再びメール受信。 そんな…にわかには信じられないな。 「タイミングからすると、新川と古泉でしょう」 あぁ、それなら納得だ。古泉も運動出来るし新川さんはこういうゲームは相当強そうだし。 ──ザクッ、 突然の足音に驚いて振り返ると、そこにはハルヒと長門がいた。 「ハルヒに長門か、無事だったようだな」 「当たり前よ!」 「……無事」 新川さん達は恐らく反対方向へ向かっている。鬼が今こちらに来るとすれば谷口・国木田組だろう。 「国木田君の奇襲は驚異ですね」 俺もハルヒも長門も何度となくやられましたよ。 「リベンジのいいチャンスね!」 鬼に攻撃するなよ。許される勝ち方は逃げ切りだけだ。 「……来た」 第四話 ツルヤへ
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3162.html
『隻眼のまりさ 第三話』 17KB 戦闘 群れ 例によって続きです。どうぞよろしく。 初めましての方は初めまして 他の作品を見てくださった方はありがとうございます。 投稿者の九郎です。 タイトルどおり前作の続編です。 ――――――――――――――――――――――――――――― ――――某日、日の出―――― ここはいつものゆっくり達が住む集落。 まだ日が昇ったばかりでゆっくり達はまだ夢の中。 ただし、現在広場にいるゆっくりを除いてだ。 隻眼のまりさは早めに目を覚ましていた。 早起きをしてトレーニングをしていたのだ。 「ゆ゙っ…ゔっゆ゙ゔゔ………!!」 まりさは直立姿勢から比べて大きく右に傾いていた。 斜めに立っていると言った方が正しいかもしれない。 足である底面全体を地面につけるのではなく 足と側面である場所ギリギリのところに力を集中し 不安定な姿勢で立っていた。 「ゆっ!あっ!うわ!!」 バランスを崩し横にコロンと転がってしまった。 ふぅ、と一息つくと今度は足の左側に力を込めて身体を左に傾ける。 「ぐっ…ゆ゙っ…ゆ゙ゆ゙っ………!!」 これは、あの時のきめぇ丸の状態を必死に思い出して考えた 隻眼のまりさの新しいトレーニング方法だった。 あの時、きめぇ丸はものすごく横に傾いた状態で平然と立っていた。 自分が真似してみると、ものすごく辛い。 人間で言えば片足立ちで横に重心をずらしているようなものだ。 まりさはただ走るだけのトレーニングでは限界と考え とにかく新しい方法を試しているのだ。 「よっ!わっ!ぐぐぐぐ……!!」 バランスを崩しそうになったが何とか踏みとどまった。 以前ぱちゅりーに強くなるのにどうしたらいいか、と 聞いたことがあったのだがその時人間さんは 様々な方法で身体を鍛えているそうだが その方法のほとんどが手足を使ったものばかりなので 今のまりさに真似できるものではない。 だが一つだけ、鍛えたいところがあるなら その部分を使い続ければいいということだけは はっきり分かっている、と。 「ぬ゙っ…ゔっ…ふぅ……」 今度は自発的に力を抜いた。 ここで無理をして狩りのほうに影響が出ても困るので 体力全てをつぎ込もうとは思っていなかった。 まあ要するに、走るのが速くなりたければ 足を使い続けて強化するしかないということだ。 そこにあのきめぇ丸を真似してみた結果が今のトレーニングだった。 ――――同日、朝方―――― 集落のゆっくり達が起き始める時間だ。 仕事始めと言ってもいい。 「あ、まりさ!ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっく…おはよう!」 まりさの試行の二つ目。それはゆっくり断ちだった。 あの日感じた違和感が形となっていたのは『ゆっくり』という 単語であったことに気が付いたのだ。 自分は速く走りたいんだ、ゆっくりじゃなく。 これがどのような結果を生むのかは、或いは何も起きないかもしれないけど ゆっくりすることを至上とするゆっくりという種のとっては壮大な試みだった。 場合によっては集落から追放なんて事態もありうると 考えたまりさはこのことについては誰にも相談していない。 実際、他人を罵るときに『ゆっくりできない』なんて物言いがあるくらいだ。 その単語を発することをやめるなどと言い出せば何が起こってもおかしくない。 だが、断ってみて気が付いたのだが別にゆっくりという言葉を発しなくても 『おはよう』とか『こんにちは』とか代用できる単語はあるし ゆっくりしなくても食事や狩りは出来る。 「じゃあゆ…じゃなくて、早く『ぶりーふぃんぐ』に行くよ!」 『ゆっくり○○するよ!』などと言葉を発して行動するのが多いゆっくりだが だからこそ逆にこの隻眼のまりさが気付くことができたことなのかもしれない。 「むきゅ?早いわね。もう来たの」 「うん。ドスは?」 「まだ寝てるわ…」 ドスの洞窟に行ってみるとぱちゅりーがすでに動き回っていた。 ぱちゅりー種は身体が弱いと聞くし、実際斜向かいに住んでいる 親ぱちゅりーは家にこもりがちなのだが 集落の参謀を務めるこのぱちゅりーは肉体労働こそしないものの 大声を出したりするとても元気なぱちゅりーだ。 さすが子育ての上手いと言われた前村長が育てただけのことはある。 「おはよー!!ゆっくりしていってね!!!」 「おはよう」 幼馴染のまりさの一匹が洞窟へやって来た。 今度はゆっくりと言いかけることもなく挨拶ができた。 「ぱちゅりー!今日は何をすればいいの?」 「待ちなさい。皆で聞かないと駄目よ」 それからしばらくして。 「むきゅ、それじゃあ『ぶりーふぃんぐ』を始めるわ」 皆がぱちゅりーに注目いつもの光景だ。 だが、隻眼のまりさにとってはここで一つの問題にぶつかった。 そういえば、みんなと走れというのがリーダーの言葉であり 自分の守ってきた行動理念だ。 だが、今のまりさは一人で走ろうとしている。 そのことを誰かに相談すべきではないか? 自分ひとりの考えで行動することがどういうことか分かっているのか? 「じゃあ今日はあなたが皆を連れて虫さんのいっぱいいる 森に行ってね」 「え?ああ…うん…」 「どうしたの?まりさ」 「なんでもないよ」 ぱちゅりーの言葉に反応するのが送れたためか 横にいたまりさが少し心配そうに声をかけてくる。 そうだ、自分は何も皆から離れようというわけではない。 いつも通り仕事をこなして、いつも通り行動し その合間に自分が気付いたことを試していくだけだ。 そこには問題はない。 それにまりさ自身分からない領域に踏み込もうというのだ。 他者に理解してもらえるなどと初めから思っていない。 やれるだけのことをやって自分が満足すればそれでいいのだ。 隻眼のまりさはそのように自己弁護して自分を納得させた。 「じゃあドスは、私と『ばりけーど』のために使う 資材を探しに行くから」 「ゆっくり理解したよ」 以前までなら何気なしに使っていた表現に 我知らず嫌悪感すら覚えるようにまでなっていたことには 目をつぶりながら。 ――――同日、昼前―――― 「ま、まってよー!!まりさー!!」 「れいむは疲れたんだねー、わかるよー」 「こんなに早いなんてとかいはじゃないわ!」 隻眼のまりさは集落の若いゆっくり達を連れて狩りをしていた。 「大丈夫!まりさは遠くへは行かないよ! 皆が離れてきたらまりさが自分から戻ってくるからー!!」 まりさは左右ジグザグにぴょんぴょん飛び跳ねながら大きな声で答えた。 これはまりさが戦闘スタイルを見直す意味で考えた 新しいフットワークだった。 ゆっくりの戦闘スタイル、というよりは唯一の攻撃手段は体当たりだ。 場合によっては噛み付き攻撃もするが通常種には れみりゃのような鋭い牙も中身を吸い出すような器用な真似はできない。 加えて、体当たりによる攻撃は直線的だ。 昔から破れかぶれに真っ直ぐ突進して痛い目にあったなどという 例は数え切れないほどあった。 「ゆっ!ほっ!やっ!!とうっ!!」 そこでまりさが考案した左右の高速シフトだ。 早朝のトレーニングで鍛えた左右への力の強化が活きてくる動き。 れみりゃの直線的な動きはれみりゃの周りを回ることで回避するという 方法が考案されていたがそれだけでは攻撃に移れない。 が、左右への動きが可能ならば回っている最中に 突然真横に飛んで体当たりしたり 場合によっては直線の攻撃は避けながら接近が出来る そんな攻防一体の戦闘スタイルだった。 これを思いついたきっかけもやはりあのきめぇ丸だった。 あんなに速い奴の攻撃を目で見て避けるなんて不可能だ。 だからこそ全く止まらずに左右に移動し続け的を絞らせない作戦。 「蝶がいたよ!」 木の根元に生えている花に大きな蝶が止まっていた。 まりさは蝶の正面に回りこみ、花ごと噛み付くつもりで飛び掛った。 「はっ!!」 接触寸前に蝶が横へ飛んだ。 まりさは蝶野位置を横目で捉えると 「えいっ!!」 横っ飛びで木に体当たり。 蝶を挟み込む要領で潰して仕留めた。 この行動には、連続攻撃の意味合いもある。 攻撃位置への移動、そして連続でジャンプをすることで 外れた対象に方向転換することなく着地の瞬間真横や真後ろに向かって再び攻撃ができる。 今仕留めた蝶もそうだが、動く敵には攻撃し辛いし 自分が縦横無尽に動けるのならば回避行動も攻撃行動もとりやすいという 利点を併せ持っていた。 「いたたたたた…蝶々は…それなりー」 あまりにうまくいったため調子に乗って思い切り体当たりをしてしまった。 木と衝突した身体がちょっと痛かった。 ――――同日、昼過ぎ―――― 太陽が真南を通過する頃、一行は目的の狩場で狩りをしていた。 隻眼のまりさはというと、木の枝をくわえては下ろしている。 「これは大きいかな…こっちは細いかも…」 ここでまりさが行っているのは武器の選定だ。 戦闘において、敵に止めを刺すには必ず二匹以上での連携が不可欠だ。 というのも、ゆっくりの死亡条件である中身の喪失という条件を ゆっくりの身であるまりさが満たすには、相手の頭部を潰すしかないのだ。 そして頭部を潰すには囮役となり敵の攻撃を回避する役 敵を倒すか止まった敵に一撃を加えてフィニッシュに持っていく もう一匹がどうしても必要。 それが必要なのもゆっくり同士で相手を損傷させるのが 困難であることに起因する。 そこでまりさが取った方法の一つがみょん種のやっている 木の枝を使った戦闘方法である。 だが、みょん種が特別強いというわけではない。 問題は致命打を与えるかどうかということ。 一対一でならともかく、多数対多数の戦闘で 木の枝を使って攻撃を仕掛けたとて、一匹にダメージを与えるだけで 殺すことはできないし、刺した棒を再び武器として使うには 抜いてから再び構えないといけない。 だからまりさは使い捨てで使える木の棒を選定しているのだ。 長すぎると取り回しが悪いし持って戦うにしても邪魔になる。 そして実際使うに当たって基本的には口にくわえて 体当たりの攻撃力を増大させるのが目的。 故にインパクトの瞬間折れることがないもの つまりは真っ直ぐであり、鋭く、なおかつくわえるグリップ部分が 太めになっている枝がベストなのである。 「っ!つっ!!」 口にくわえたまま例のステップを敢行。 一通りステップを踏んでみた結果、一本いいものを見つけた。 実戦で使ってみるまで使い勝手は分からないが 役に立たないのであれば捨てて戦えばいいのだ。 「まりさ、何してるの?」 「ん、別に…」 ありすが近づいてきた。 元々誰かに話すつもりはなかったし このありすに話しても理解できるとは思えなかった。 「最近まりさ、かっこよくなったわよね…」 「え?そ…そう…?」 なんだか様子がおかしい。 このありすはこの夏独り立ちをしたばかりで 越冬に向けての食料集めが難航してるという話を聞いた。 今回の狩りにどうこうしたのもそれが理由だ。 「なんて言うのかしら…変わったというか強くなったというか… 前のまりさと今のまりさは全然違う…」 「…………?」 なにやら身の危険を感じ始めた隻眼のまりさ。 が、仮にも集落の一員だ。 いきなり攻撃するわけにもいかない。 ともかく、話してみないことにはどうにもならない。 「ありす、狩りの調子はどう? 越冬に向けて秋のうちにたくさん食料を集めないと大変だよ?」 「まりさ…私とずっとゆっくりして!!」 ありすの唐突な言葉。 『自分とゆっくりして』はゆっくり達に共通する求愛の言葉だ。 そう言えばこのありすはまだ番がいなかったな、と頭の片隅で考える一方 隻眼のまりさは今回も『ゆっくり』という言葉に反応した。 「いやだよ!ありすとゆっくりするつもりなんかないよ!!」 ついつい怒鳴ってしまった。 今のまりさはゆっくりするつもりなど全くない。 ありすのゆっくりして、がまりさにとっては嫌悪感を感じさせる 言葉以外の何者でもなかったのだ。 ちなみに否定したのはゆっくりすること、なのだが ありすにとっては致命的な言葉。 そしてその一瞬の感情の爆発は 「まりさあああああああああああああああああ!!! つんでれなのねええええええええええええええ!!!」 ありすをレイパーとして覚醒させる起爆剤となってしまった。 「うわあああああああああああああああああ!!!」 飛び込んできたありすをバックステップで緊急回避。 危なかった。 今回自分が考えた戦闘スタイルがなければ こんな回避方法は取れなかっただろう。 そして自分が考えた方法が決して間違いでなかったことを 感じさせるには十分だった。 「まりさああああああああああああああ!!!」 そこでまりさは一つのことを考え付いた。 自分は武器の選定を誰にも話すつもりはなかった。 故に、ここには誰もいない。 そして、今自分の下には丁度いい枝が一本だけ。 レイパーと化して他のゆっくりを死なせた者は 例外なく制裁か追放だ。 だからこそ、このありすで模擬戦闘を行おうという考えに至った。 「まりさあああああああああああああ!!! すっきりしましょおおおおおおお!!!!」 「……っ!!!」 真っ直ぐ突進してくるありすを今度はサイドステップでかわす。 目を見開き涎をたらすありすは今までのすました ありすのイメージとはかけ離れている。 髪の毛を振り乱して突進してくる様はれみりゃとは 違う恐怖心を煽られる。 「どぼじでにげるのおおおおおおおおお!!??? どっでもぎもぢいいのよおおおおおおお!!??」 まりさに回避されたありすがこちらに顔を向けてきた。 顔面から地面に激突したありすはさらにひどい顔になっている。 正直直視したくない。 まりさは連続でバックステップを踏んで距離をとる。 「まりさあああああああああああああ!!!!」 それしか言えないのか、と冷めた感情を持ちながら サイドステップで接近。 「まりさああああああああ!!! やっどうげいれでぐれるのねえええええええええ!!」 冗談じゃない。 まりさの心はますます冷え切っていく。 すれ違う瞬間、まりさはカウンターチャンスを見ていた。 ゆっくり同士が衝突する場合、顔面から正面衝突するより 人間で言うショルダーチャージの要領で斜めから 当たるほうが有利だ。 その方が顔面が痛くないし側面のほうが凹凸が少なく頑丈 なおかつ痛みが少ないので手加減なしで体当たりが可能だ。 「どぼじでよげるのおおおおおおおおおおお!!!!」 連続で突っ込んでくるありすを最小限のサイドステップで回避。 まりさの回避運動が闘牛士のように冴え渡る。 普通のゆっくりなら背を向けて逃げてしまうため なりふり構わない突進をしてくるレイパーに体力差で 捕まってしまうのだが 今のまりさは最低限度の動きで回避しているのだ。 このペースで行けばありすのほうが先に力尽きるのがオチだろう。 「ばりざ!ばりざ!ばりざ!ばりざああああああああああ!!!」 ありすの顔はもう先ほどと同じゆっくりとは思えないほどに変貌していた。 その場ですっきりするつもりで仕掛けてきたのだろう。 連続しておあずけを食らって頭がおかしくなったのかもしれない。 が、ありすの熱が高まれば高まるほどまりさの心は冷え切っていった。 そして冷え切るのと同時に、これまでにない昂ぶりも感じていた。 ゆっくりしていた頃には考えられない。 冷めれば冷めるほど、冷静な回避ができた。 高まれば高まるほど、強力な攻撃が出せる予感がした。 「…!!」 そうか、と隻眼のまりさは唐突に気付いた。 これが戦闘だ。 ゆっくりにとって制裁やゲスの攻撃など単なる暴力だ。 相手がまともに抵抗しないように数や力だけで圧倒する 単純なものではない。 確実に、残酷に、相手の命を奪うことに特化した 命、誇り、信念をかけた戦い。 「ま…………まり…………………まりざぁ……… まりざああああああああああああああああああ!!!」 「うわああああああああああああああああああ!!!」 隻眼のまりさは全身に力がみなぎるのを感じた。 それは、不思議な感覚だった。 カウンターを発動するときの緊張感じゃない。 突進するときのがむしゃらさでもない。 最後の力を振り絞って向かってくるありすに まりさは、全力の攻撃を仕掛けていた。 ――――同日、夕刻―――― 隻眼のまりさは連れて行った狩りに行った皆と共に 集落へ帰還していた。 …件のありすをのぞいて。 「じゃあ、結局見つからなかったの?」 「うん、遠くに狩りに行ったのかもしれないし 気付いたらいなくなってたんだよ。 一人立ちしてからまだ狩りになれてなかったからかも…」 嘘だ。 ありすはまりさが殺したのだ。 「ごめんね。 まりさがしっかりしていなかったから…」 「仕方がないわ。 いくらまりさでも全部のゆっくりを見張ることなんてできないわ」 あの後、まりさが集合をかけて皆を集めた時 ありすは当然戻ってこなかった。 皆で少しだが辺りを探してみたが 地面に埋められたありすの死骸を 他のゆっくりが発見できるはずもなく やむなく集落に戻ってきた、という形を取ったのだ。 現在ブリーフィングでその旨を報告しているところである。 「ありすの家族は?」 「あのありすは一人だったし、おかあさんとおとうさんも もう死んじゃってるから…」 「…そう、わかったわ まりさ、今日は大変だったわね。 日が暮れるからもう休みましょう」 「分かったよ」 そう言ってぱちゅりーは自分の部屋であるドスの 洞窟の横穴に入っていった。 ――――同日、日没―――― まりさは、あの時のことを思い出していた。 『うわああああああああああああああああ!!!』 『まりさあああああああああああああ!!!ぎゅぶぇっ!!!』 いつものカウンターとは全く違う感覚。 木の枝をくわえて突進してくるありすに対して 交差法での体当たり。 それだけのはずだったのだが あの時の体当たりは全く違うものだ。 なぜならば、体当たりのヒットしたありすは見事に 『バラバラに砕け散って』死んだのだ。 その直後、我に返ったまりさは急に別の意味で頭が冷えていき 大変だ、どうしよう、と焦りに焦った。 だが少ししてからだったら埋めてしまおう、と思い 武器の候補として集めていた木の枝を使って ありすの死骸を地面に埋めてやり過ごした。 ありすがレイパーに名って襲ってきたと言えば 理解が得られるかもしれないが 何よりまりさはあの状況、あの感覚を 誰かに説明する気になれなかったのだ。 ゆっくり殺しの汚名を着せられることでもなく ただあの時の一瞬の感覚と 戦いの中で得たものをごたごたのせいで失くしてしまうことが まりさにとっては一番の損失だった。 そしてまりさはこの一件ではっきりと分かった。 自分を縛っていたのはゆっくりだ。 ゆっくりしていたらあのありすに襲われていただろう。 そして、ゆっくりしていたらあの感覚は得られなかっただろう。 もう二度とゆっくりするものか、と思いつつ 隻眼のまりさは倫理や、秩序、規範 そしてゆっくりとしての概念や矜持を捨ててでも この先にあるものを見てやる、と意識を新たにしながら眠りについていた 続く あとがき まず最初に、掲示板での様々なコメントありがとうございました。 下げた頭が上がらないというのはこのことです。 あれほどの反響が得られるほどこの作品が読まれていたことを そして続いて欲しいという言葉を嬉しく思います。 感想を一通り読ませてもらいましたが 全ての意見の中でおおよそ共通するのは 『評価されたきゃ完走しろ』というのがありました。 人気がないのであれば投稿自体が邪魔になってはいないかとも思っていたのですが 僭越ながら続けさせてもらおうという思いを新たにしました。 本当にありがとうございます。 加えて、感想を下さいなどということをあとがきに載せた事 本当に申し訳ありませんでした。 ご迷惑になっていなければいいのですが。 まあこの話題はこれくらいで。 この作品の特徴ですが ゆっくりがゆっくりらしくない 心理描写が多すぎ の二つを含むところはテーマ上変わらず続いていくので ご了承ください。 これからは私は九郎ver.2とまでは行きませんが 九郎ver.1.01位の気持ちでやっていきたいと思います。 お気に召しましたら、今後もどうぞよろしくお願いします。 最後に、この作品を読んでくださった全ての方に無上の感謝を。 私がここに投稿させて頂いた作品一覧 anko3052 ゆっくり駆除業者のお仕事風景 anko3053 ゆっくり駆除業者のお仕事風景2 前編 anko3054 ゆっくり駆除業者のお仕事風景2 後編 anko3060 ゆっくり駆除業者のお仕事風景3 anko3061 隻眼のまりさ プロローグ anko3075 隻眼のまりさ 第一話 anko3084 ゆっくり駆除業者のお仕事風景 幕間 anko3091 隻眼のまりさ 第二話 anko3101 ゆっくり駆除業者のお仕事風景4
https://w.atwiki.jp/oreqsw/pages/716.html
魔人と呼ばれる俺 第三話中篇「十二の戦い、司令官の俺」 [[俺「ストライクウィッチーズやな」 http //dat.vip2ch.com/read.php?dat=02329] 340-364,714-716 [[俺「ストライクウィッチーズどすえ」 http //dat.vip2ch.com/read.php?dat=02331] 30-48 [[俺「ストライクウィッチーズじゃけぇ」 http //dat.vip2ch.com/read.php?dat=02332] 253-272 ―――――――― 滑走路先端 俺「風呂上がりに浴びる夜風は涼しいな・・ と感傷に浸ってる場合でも無いな」 今日は夜間哨戒は組まれていない …油断してるな 確かに先日まで俺の探知内には巣の周りを除けば一体も居なかった… しかし今は別だ…12方向から同時に小型が1機ずつ近付いている 基地のレーダーに入るには後3時間 しかしこのタイプか…大丈夫かね… …とりあえず先手を打つとするか 俺「ストライクウィッチーズ全機に通達する ただちにブリーフィングルームへ集合 繰り返す ストライクウィッチーズ全機に通達する ただちにブリーフィングルームへ集合」 ―――――――― ブリーフィングルーム 俺「これで揃ったか? 召集を掛けてから30分経過か・・ 遅れは戦闘で取り戻さないとな 手短に説明する、この基地に小型ネウロイ12体が同時進行中だ この基地のレーダーに入るまで後約149分 ネウロイの位置は時計の12を北として時計通りに来る 配置はこうだ 1時方向:シャーリー 2時方向:宮藤 3時方向:ヴィルケ 4時方向:サーニャ 5時方向:ルッキーニ 6時方向:クロステルマン 7時方向:バルクホルン 8時方向:エイラ 9時方向:坂本 10時方向:ビショップ 11時方向:ハルトマン 12時方向:俺」 ミーナ「これは本当なのかしら? それに油断しているわけではないけど小型ならある程度引き付けておいたほうが全員まだ固まって行動出来るわ」 俺「理由を説明しようとしていた所だ 先に言うがこの情報は正確だ そして肝心な理由だが相手は人型だ 正直強さは未知数だ 強いかもしれないしそうじゃないかもしれない 俺以外の上位ウィッチを出来るだけ均等な位置に割り振ってある 正直頑張ってくれとしか言えん 従いたくないならそれでも良い 誰も来ないなら一人でやるだけだ、解散」 解散を告げ部屋を後にし格納庫へ向かう …断言するがこの戦闘の最低勝利条件は全機出撃すること 俺一人では無理だ ま、大丈夫ダロ ルッキーニ「おーれー!」 ルッキーニが背中に乗ってきたがなんとか踏ん張る 子供は元気ダナ… 俺「どうしたルッキーニ? 従うなら早く格納庫に行け」 ルッキーニ「うーん!なんか俺寂しそうな空気してたからね! 格納庫まで走れー!」 俺「はいはい・・走るから掴まってろ」 後ろの視線が怖いしな! ―――――――― 格納庫内発着所 俺「全員集まったか じゃ、これを腕に付けろ」 俺は全員に機械仕掛けの腕輪を渡す ゲルト「これはなんだ? 普通の腕輪じゃないくらいはわかるが」 俺「これは“リンクス”といってな普通は三人で使うもので装着者同士を魔力で繋ぎ 魔力共有、意思伝達出来るものだ 今回は綺麗に12等分されているから強力な多重六芒星を作れる 多重六芒星によって魔力も普段より高まるから頑張れ 特に坂本、気にせず烈風丸を使え 真・烈風斬も不可能ではない」 “リンクス”は敵も使うだろう…読み通りなら 坂本「・・俺は知っていたか 有り難く使わせて貰うぞ」 全員が疑いながらも装着していく “リンクス”…起動 ミーナ「何も・・起き無いわね」 俺「まだだ・・全員が各々の位置に向かえば“リンクス”同士が線を結んで多重六芒星を形成してくれる 今は俺を信じて行け」 俺はエイラとサーニャに近寄る 俺「お守りだ 無理せず危なくなったら逃げろ」 二人の首にチョーカーを着ける …お守りといっても何の効果も無いけどな …二人だけ残してやれば良かった後ろの視線が…なんというか… シャーリー「俺も中々やるな・・ここでこれとは・・」 ゲルト「どういうことだ?リベリアン」 エーリカ「トゥルーデ・・」 ゲルト「なんだ?ハルトマン お前はわかるのか?」 宮藤「凄いね!リーネちゃん! あんな風にプロポーズされたいよね!」 リーネ「そうだね!芳佳ちゃん! しかも二人にだよ!爛れた関係だね!」 俺「・・・はぁ?」 何言ってんだこいつら… 特にこの阿呆巨乳娘は (マスター…このチョーカーにはそんな深い意味があったんですか…) いや、これただのお土産なんだが… ルッキーニ「この首輪に付いてるピカピカ何!?」 俺「首輪じゃなくチョーカーって言え それはプラチナだ、人に贈るのに安物じゃあれだからな つか早く行くぞおまえら」 エイラーニャ「・・・・・」ボフッ 俺「おい、何故倒れる!?」 倒れかけた二人を抱き留める 一体何があったんだ… ミーナ「あらあら・・俺さんには後で執務室に来ていただかないとね」ゴゴゴ 何故!? リーネ「あんな風にプロポーズされたいね!芳佳ちゃん!」 宮藤「そうだね!リーネちゃん!」 全然意味がわからん 俺「よくわからんが俺は先に行くからこの二人が起きたらちゃんと行けよ」 二人を布を敷いた床に横たわらせストライカーを装着する 俺「行こうか“Gale”・・馬鹿を殴りに」 ―Yes-Boss ―Striker-“Gale”.Low-Ignition 俺「お前は気の利くストライカーだな・・」 ―Thanks-Boss ―Are-you-OK? 俺「どうだろうな・・ま、頑張るしかないだろ 俺からお前らへの命令だ 死ぬな、必ず生きて帰れ 危なくなったら逃げろ 隙があれば喰らい付け 以上だ・・幸運と魔神の加護を我等に」 ゆっくりストライカーを発進させ滑走路の半ばに達した辺りで一気に加速させる シャーリー「死亡フラグ立てまくったぞあいつ・・これで帰ってきたら奇跡だな」 ミーナ「そうかしら?帰って来るに決まってるじゃない・・主人公なんだから」 もっさん「何を言ってるんだミーナ?」 エイラーニャ「・・・・・ハッ!?」 エイラ「お、俺ハ!?」 もっさん「あいつならもう行ったぞ 起きたのなら私たちも行くぞ」 エイラ「もう行ったのカヨ・・協調性がナイナァ・・」 俺《こちら12番機、聞こえてるぞ、協調性が無くて悪かったな・・》 エイラ「ぬ、盗み聞きスンナ!」 俺《ちっ・・じゃあインカム切るからな・・》 サーニャ「俺さん・・切っちゃ・・駄目ですからね? エイラは寂しがり屋だから・・」 俺《・・了解 暫くは切らないからサーニャも安心して戦って来い》 エイラ「私は別に寂しがり屋じゃ無いゾ・・」 俺《寂しがり屋かどうかは措いといてだな 切らない方が俺が安心するという事で良いだろ だから早く出撃しろ・・お前ら》 ―――――――― 12時方向…敵前 俺「悪いが一旦通信を切る 全機敵前にて待機、合図があるまでは手を出さない限り相手は攻撃しては来ない」 一旦インカムを切り敵を見据える 俺「こんばんは、人型ネウロイ ・・まあ君だけはネウロイ化した人間だがな」 ???《流石ですわね 通告します、貴方とストライクウィッチーズを消すようにという指令が下りました それにより我が軍は貴方を除隊しましたわ 私としては非常に不愉快ですがどうしようも無いのですわ》 俺「私は大切なものを護る為なら何だってする・・が弱ったな 大切なものを護る為に大切なものを倒さないといけないとはな まあ友がお前をネウロイ化させた上CCSを使って 複数のネウロイを差し向けるだろう事は大方わかっていた 先手を打って一対一の状況を作るためにこの隊列をお前に教えたしな どうしようかアリサ?対象が私だけなら全軍撤退させる代わりに倒されても良かったのだが そうも行かんしな」 アリサ(???)《流石ボスですわ・・でも私も引けませんの ボスのストライカーを破壊することで撃墜としますわ どこかで誰かと幸せに暮らしてくださいな》 俺「仕方ない・・だがお前を殺しはしない 俺は出来る限りこの手を血に染めないと今誓った お前の忌まわしい力だけを拒絶する!」 友2「ちょっと待て二人とも! 幾ら殺し合わないからといって二人を戦わせるわけにはいかない! ボスが除隊されたって二人は仲間だろ・・・」 俺「友2・・来たのか・・ ならお前はルッキーニを助けに行け そしてこの戦いが終わったらアリサとアリサの妹を軍から見つからないよう助けてやれ 俺の最後の命令だ・・従え 俺は必ずアリサのネウロイ化の力だけを消す」 友2「ならお前が力を使って終わりで良いだろ! アリサもボスに力を使わせたくないのはわかってるけど我慢しろって!」 アリサ《行って下さいませ友2さん 私も今だけボスの翼を奪うだけです絶対に命を奪ったりはしませんわ》 友2「くっ・・もう勝手にしてくれ・・ でもな・・絶対死ぬなよ二人とも」 俺「あいつは優しすぎてたまに融通利かないときがあるからな・・ ただの模擬戦みたいなもんなんだがな」 アリサ《否定はしませんけどただの模擬戦で説明はつかないと思いますわ・・ 後で友2さんには謝らないといけませんわ》 俺「そうだな・・はじめるか」 アリサ《そうですわね》 インカムの電源を入れ全機に接続する 俺・アリサ「《全機に通達!戦闘を開始する! “リンクス”接続開始! 1に5と9を!2に6と10を!3に7と11を!4に8と12を! 5に1と9を!6に2と10を!7に3と11を!8に4と12を! 9に1と5を!10に2と6を!11に3と7を!12に4と8を! 多重六芒星の陣起動!》」 アリサ《始めましょうボス・・ “天槍”のアリサ・・貴方を楽園へと導く為に無力化させていただきますわ》 アリサが二本の槍を構える ネウロイ化した意味あまり無くない?とか突っ込んだら負けだ 俺「始めようかアリサ・・“エンゲージ” “オラーシャの狂った魔人”の俺・・我が力にてお前の力を無力化させる」 二本の扶桑刀を構え魔力を送り込む 決して語られる事の無い憎しみ無き1つの戦いと 11の人型ネウロイとウィッチ達の激動の戦いが始まった ―――――――― 1時方向…シャーリー シャーリー「?なんか腕輪から線が二本出たな へぇー・・本当に魔力に満ち溢れてる気分だな! さっさと終わらせて誰かを助けに行けるようにしないとな! よし!手加減しないからな!」 人型が放つビーム群をかわしながら銃を撃つ しかし人型も素早くかわしていく シャーリー「速い!多分あたしと同じくらいだ でも技術は私の方が上さ!」 人型のビームをシールドで防ぎわざと減速し相手の後ろを取る これで優勢になったが油断はしない 優勢と劣勢は紙一重 深追いまではしない シャーリー「とりあえず背中を撃つ!」 今度は当たった コアは…微かに見えた! こいつは腹部辺りにコアが有るみたいだな 人型が振り返る瞬間に一旦射線から退く ルッキーニが居ればこんな戦闘すぐに終わらせられるのに 人型が接近して来る 今度はあたしの後ろを取る気か 逆にあたしが取って今度こそコアを砕く! 固有魔法を使い加速し引き離す 固有魔法がある分こっちが速い! 人型1《・・・・・》 人型が少し変型する、より速く動く為に空気抵抗を少しでも減らすために シャーリー「変型した!? このままじゃ追いつかれる!」 俺《12番機から1番機へ 焦るな、まだアドバンテージが無くなったとは限らない あの人型が慣れない速さで正確に動けるとは限らないからな! 後少ししたらUターンしろ 相手がお前より軌道の大きいUターンをした場合一気に接近してコアを撃ち抜け! コアの位置はわかるか?》 シャーリー「大丈夫だ!やってみる!」 俺《無理はするなよ》 シャーリーはビームをかわしながらUターンする シャーリーを通り過ぎた人型もUターンを試みる だがシャーリー程上手くは無かった 彼の言う通り所詮は付け焼き刃だった 人型がシャーリーの接近に気付いた時には遅かった 多数の銃弾を浴びコアが砕かれる シャーリー「1番機コアを破壊!」 ―――――――― 2時方向…宮藤 宮藤「腕輪から線が二本出てる・・あんまりいつもと変わり無いような・・ でもみんなが側に居るような感じがする!」 いきなり人型が太いビームを放つ 既に戦闘は開始されている 宮藤はシールドを張り堪える 宮藤「この人型はあの時のネウロイとは違う・・ 倒さないといけないんだ!」 人型のビームをシールドで防ぎながら銃撃を行いコアを探す しかし相手の再生力が高く思うようにいかない こんな時に誰かが居れば私は防御に集中して誰かに攻撃に集中して貰えるのに 宮藤「あれ?あんまり疲れない・・ まだまだ力が出る! 思ってたより凄かったんだ・・これ・・」 弱気になってちゃ駄目! みんな頑張ってるんだから! まだ狙っていない頭を防御しながら撃っていく…あった! コアを狙って撃つ…だが人型は余裕は無いと判断したのか今まで行わなかった回避行動を始めた 動きは速くは無いがコアに当てるのは高い再生力も相まり容易では無かった おまけにビームも放ってくるし… 宮藤「私には出来ないなんて言わないけど私だけじゃ厳しい・・」 俺《12番機から2番機へ 無理せず危なくなったら逃げろ シャーリーが撃破に成功したらお前の所に向かわせる》 宮藤「駄目です!それじゃあ魔法陣が弱まってみんなに迷惑掛けてしまいます!」 俺《わかった、ならアドバイスだ この人型にはそれぞれ特性があるシャーリーの相手は“変型による加速”だった お前の相手は“高い再生力”だ ただ再生力以外は大した奴じゃないお前も動きながらビームを避けてみろ 案外隙だらけかもしれん》 宮藤「わかりました!試してみます!」 彼の言う通り動きながら避けてみる 始めはシールドを使うことが多かったが少しずつパターンが読めてきた さっきよりやりやすい! 宮藤「これで・・終わりです!」 銃弾がコアに直撃し砕ける アドバイスは貰ったけど一人で倒せた…信じられない 宮藤「二番機コアを破壊!やりました!」 ―――――――― 3時方向…ミーナ ミーナ「腕輪から伸びたこの線・・魔力共有の為のパイプみたいなものかしら なんだか身体が軽く感じるわ」 俺《・・・・・》 ミーナ「俺さんは後で執務室に出頭してくださいね?」 俺《12番機から3番機へ まだ何も言ってないだろうが!》 俺の言葉と人型の放つビームをかわし銃弾を放つ しかしそう易々と当たってはくれない ミーナ「簡単にやられてはくれないみたいね」 人型と離れ距離を取ろうとするが離れた分人型が近付き距離が開かない 横に動けば同じように動き試しに近付けばその分離れる ミーナ「この距離でどうにかするしかないわね・・」 ビームをかわしながら銃弾を放つがやはり避ける もしかしてわたしが動かなければ避けなかったりするのかしら? 俺《アドバイスは・・正直無いな この相手の特性は“空間把握”なんだが一対一の場面では役に立たんだろ・・ だが自分の特性で精一杯で相手の真似をするのがやっとかもしれない ヴィルケが動かなかったら案外ただの的と変わらんかもな》 ミーナ「・・暗に私の固有魔法に対しても役立たずと言ってないかしら?」 俺《何言ってんだ?俺は固有魔法に対しては何も言ってないからかな!》 彼を弄るのは楽しいわね…でもやりすぎると刺されそうだから程々にしないとね とりあえず今は集中しよう有効打はまだ与えていない ビームをシールドで防ぎながら隙を見て銃撃する 回避こそされるものの半分も当たるようになった 私と彼の読み通りこの人型は単純な動きをするだけで手一杯みたいね 一対一のこの状況じゃ普通の小型より弱い これを倒せばちょうど撃墜200機目…勲章ね ビームをシールドで防ぎ隙を見て銃撃を繰り返しながらコアを探す …頭部にコアを確認! コアを重点的に狙い…砕く ミーナ「これがあるとあまり疲れないわね これからの戦闘に使うことも視野に入れて置こうかしら 3番機コアの破壊に成功!」 ―――――――― 4時方向…サーニャ戦闘前 サーニャ「腕輪から出てるこの線・・俺さんとエイラに繋がってるんですね・・・ 魔力と二人の温もりを感じます・・」 俺《12番機から4番機へエイラはともかく俺から温もりなんて感じるか? 俺はそんなに温かい人間じゃないのは知ってるだろ?》 サーニャ「でも俺さんはもう出来るだけあんなことはしないって決めてるんじゃないですか? それに私とエイラの前では初めから優しい温かい人でしたよ?」 俺《守れるかどうかもわからない決め事だ・・ それに優しい訳じゃない、ただの罪滅ぼしだ・・ サーニャ、戦闘開始だ そいつの特性は“全方位短波探知”だ、これ自体はやっかいじゃないんだが そいつはウォーロックと似て両腕からエネルギーを集中させ強力なビームを放ってくる ウォーロック程威力は無いがその分チャージに掛かる時間も少ない 深追いせず堅実に一撃ずつ食らわせてやれ 危なくなったら言え、こちらから砲撃して支援する》 サーニャ「4番機了解しました・・」 牽制にフリーガーハマーから人型に向けて1発発射し回避した方向へも1発発射する 人型4《・・・・・!》 人型の脚部を破壊することに成功した しかし人型が既に構えている…彼から聞いた強力なビームが来るのだろう シールドで防げるかどうかはわからないので今は回避するしか無い サーニャ「高威力ビーム・・来ます!」 通常のビームより太く赤黒いビームが発射される なんだか・・嫌な感じがします・・ 横へ回避しながら隙だらけに見える人型へ1発打ち込む 人型4《・・ォ・・ォオ!》 人型の手の甲から別のビームが発射され、ミサイルが落とされた ミサイルを貫通したビームがサーニャを襲う サーニャ「きゃっ!・・え?痛くない?」 私はビームを避けきれずに腹部に掠った筈… 服は確かに一部が焼け焦げているしかし素肌には何の形跡も無い 俺《大丈夫か?サーニャ? ここから砲撃を行う・・出来るだけ動くなよ? それで俺の砲撃が直撃する瞬間にフリーガーハマーを全弾発射させろ》 サーニャ「はい・・わかりました」 腹部の怪我が消えた謎があるけれど支障があるわけでは無いので後で考えよう フリーガーハマーを構える 相手の人型も遅れながら構えた お願い…間に合って! しかし人型から高威力ビームが発射されようとしている それでもサーニャは動かない 彼が必ず高威力ビームが来る前に砲撃で阻止してくれると信じているから その瞬間砲撃が人型に直撃する 慌ててフリーガーハマーから全弾発射させる 敵が最後の力を振り絞って放っただろう頼りない極細ビームが左肩を貫通した それでもコアを破壊出来たなら良い …まただ 服は確かに一部が焼け焦げているが素肌には何の形跡も無い 一体何なのだろうか サーニャ「・・4番機敵ネウロイの消滅を確認」 ―――――――― 5時方向…ルッキーニ ルッキーニ「みんな大丈夫かなー・・」 一人で戦うのはちょっと寂しい…でもみんなも一人で頑張っている 後でみんなと一緒にお風呂に入ろう…彼はきっと嫌がりそうだけど 寂しさを紛らわせるために少し彼をからかってみよう ルッキーニ「ねぇねぇ、俺?聞こえてる?」 俺《12番機から5番機へ聞こえてる・・なんだ? 戦闘に集中しなくて大丈夫か?》 ルッキーニ「大丈夫!よくわかんないけど突進してくるだけだから! あのね、これが終わったらみんなとお風呂に入ろうかなって思うんだけどどう思う?」 俺《ビームは撃って来ないのか? そいつの特性は“高熱攻撃”といって 性能は低いが追尾性のあるビームを撃てる筈なんだが・・ 今はそいつも遊んでるだけだろう そのうち使ってくる筈だ、油断するなよ? 話を戻そう・・別に良いんじゃないか? みんな疲れてるだろうし汗も流したいだろうしな》 ルッキーニ「そうだよね! もちろん俺も一緒に入るんだからね!」ニシシ 俺《入るわけないだろ!まったく・・・ふざけてないで早く倒しちまえ お前のところに俺の元部下を行かせたからコキ使ってやれ》 俺を弄るのはやっぱり楽しい ブリーフィングの後に 俺の背中に乗ったときも凄く焦ってたしね! でも俺の元部下って誰だろう?前に来た人かな? あの人はなんか嫌だな… それにしてもこの人型どんどん加速してきて避け難くなってきたなー… すれ違いざまに銃撃するが速くて中々当てられず少し装甲を削るくらいにしかならない 再度来る頃には再生してるしなー…試しにあたしも突撃してみようかな… 人型を避けながら自分を加速していく シャーリーがいれば楽なのにー 出来る限り加速した後こちらに向かってくる人型に正面から突っ込むが弾かれてしまう なんで!あたしの方シールドの方が硬いはずなのに! 気がつけばビームが迫っている…多分あたしを弾いた時に撃ったんだ… あたしここまでなのかな…死にたくないよ! 友2「フランカ!」 誰?フランカって…あたしの知ってる人? 誰かがあたしの腕を引っ張りあたしの前に立ちシールドを張る 彼以外の男のウィッチは知らないけど知り合いなのかな… 友2「大丈夫か?可愛いガッテーノ」 戦場で口説く人はあたしの知り合いにはいない… ルッキーニ「あたしは大丈夫だけど・・誰?俺の言ってた元部下の人?」 友2「そうだ、あいつの・・元部下というより親友だ 俺が少しずつあいつの動きを止める・・その隙に君はコアを破壊してくれ」 ルッキーニ「う、うん・・ ねぇ・・お兄さんあたしの知り合い?」 友2「・・一応な 詮索は後にしてやるぞ」 人型に向かって両手を広げ集中する 妹を堕とさせはしない! 友2「フェルマータァ!!」 いきなり人型の速度が落ち、さして時間も掛からずのろのろとした動きに変わる このお兄さん凄い… 友2「今だ!コアを砕くんだ!」 人型に向けて一気に銃弾を浴びせ…コアを破壊する ルッキーニ「5番機俺の親友とコア破壊ー!」 友2「俺から聞いてはいたが元気そうで本当に良かった・・」ボソッ ルッキーニ「うじゅ? 何か言ったー?」 友2「いや?なんでもない」 ―――――――― 6時方向…ペリーヌ ペリーヌ「6番機から12番機へ 俺さん・・聞きたい事がありますわ」 この腕輪から出ている光線…あの二人と繋がってますのね きっと二人とも頑張ってるのでしょうね 二人ならきっと大丈夫ですわ… 俺《戦闘に集中しろクロステルマン 言いたい事くらい後で聞いてやる》 ペリーヌ「今じゃないと駄目というわけではありませんが二人きりで話をしたいのですわ」 人型のビームを防ぐ 今までのとは違う…なにせビームが電気を帯びているからだ 俺《少しだけだぞ… だが先に一つ言わせてもらう そいつの特性は“ビームを電気に変換する”だ ついでにトネールも効かないから使うなよ? もし助けて欲しいなら早く言えよ? 俺からは以上だ》 ペリーヌ「トネールが効かない・・わかりましたわ 正直に言いますわ、わたくしは貴方が怖いですわ 人を殺して平然としていられる貴方が・・」 俺《・・俺は大切なものを護るためならなんだってやる 今は出来る限りこの手は汚さないと誓っているがやはり汚す事もあるだろう 汚れなんか俺一人が被れば良いんだ 大切なものが笑って過ごす為なら俺の意思なんか関係ない》 ペリーヌ「貴方は必要ならわたくしたちすらも手に掛けるでしょうね そんな事は止めて欲しいですわ 確かに世の中綺麗な人ばかりとは言いません・・ しかし取り締まる方はちゃんと居るのですしその方達に情報を提供すれば良いだけでしょう」 ビームをシールドで防ぎ銃撃する 髪が逆立ってますわね… 俺《出来るだけそうしてるんだが初めの頃は癒着が酷くてな・・ 最近はやっとほとんど任せられるようになった まあ正直に言うけどな・・この部隊もさ・・今では大切なんだよ だから手を掛けたりなんかしない お前達は俺とネウロイだけを恐れていれば良い 俺はお前達を出来る限り護る》 ペリーヌ「・・それでもわたくしは昔から貴方が嫌いですわ・・」 俺《それでいい ガリア復興頑張れよピエレッテ》 通信が切られた そういう自分が憎まれ役を買ってる所が嫌いなんですわ! 人型を睨む この怒りを全てぶつけてやりますわ! 人型に銃撃する 怯えてますの?少し人間くさいですわね でも止めませんわ ビームを避けながら銃撃を続ける 動きはたいしたことありませんわね 銃撃を続けている内にいつの間にかコアを破壊したようで人型が消えていく …あら?もう終わりですの? ペリーヌ「はぁ・・はぁ・・6番機コアを破壊ですわ!」 ―――――――― 7時方向…バルクホルン ゲルト「7番機・・交戦を開始する」 人型が接近して来る 銃撃で応戦するが避ける気配が無い 突っ込んで来る気か! シールドを張りレーザーに備える しかし人型が右腕部を振りかぶりシールドに叩き付け右腕部の先からレーザーを放ちシールドごと私は弾かれる いったいなんなのだこいつは! ゲルト「7番機から12番機へ 聞いてるか!人型はこんな殴ったり蹴ったりしてくるものなのか!?」 俺《12番機から7番機へ そんなことお前の相手しかやらん アドバイスだ、良いか?そいつの特性は“物理混技”だ 要するに物理攻撃とレーザー攻撃を行う武人みたいな奴だ 両腕両足の装甲は硬いが他はそうでもない 腹部や胸部を狙え》 ゲルト「・・7番機了解 しかしなんでそこまで詳しくわかるんだ?」 俺《余計な詮索はやめておけ ただ色々と知っているだけだ・・戦闘に集中しろ》 彼の事はよくわからない…筈だ 彼は加減というものを時々忘れている 誰かを護ろうとしているのは良いのだがその為の手段が時に残忍だ そういえば彼には妹が居たな 写真が入っているというロケットの中は見せてくれなかったが… あいつは妹の話しをするときだけは表情も柔らかかったな 妹好きに悪い奴は居ない 今回だって少し暴走しただけに違いない おっと右から人型が… 回避しながら背に銃弾を浴びせる あいつの言う通り脆いな コアを撃ち抜くにはそう時間は掛から無い 再び人型が距離を詰め右腕部をシールドに叩き付け…拳大程のレーザーがわたしが体勢を崩してから放たれた クリス…すまない… 俺《・・ちっ! 腹部と肩やられてんだから勘弁してくれよ・・ 全機人型を撃墜したら帰投しろ! ・・ザメナ!》 …あいつは何を言っているんだ?ただの独り言か? …私は…死にたくない! せめて急所を外そうと体勢を変え脚を振り上げたがやはり間に合わずレーザーは胸部と肩の間に直撃する ん?痛くないな… 恐る恐る傷口を触るが破けた服に素肌が有るのみだった 傷が無い…だと!? よくわからない…だがまだ生きて…闘える 人型も戸惑っているように見える…そんな感情があるとはな この機を逃さすわけにはいかない! ゲルト「うおぉぉぉぉぉ!!!」 銃弾の雨を人型に浴びせコアを探す…そこか! コアに銃弾を集中させ砕き散らせる …こいつは手強かった… ゲルト「7番機敵ネウロイの消滅を確認・・帰投する」 ―――――――― 8時方向…エイラ戦闘前 エイラ「・・・」ポヨポヨ 両手で胸を下から持ち上げたりしてみる そりゃでかくはないけどサ… 俺《随分と余裕そうだな・・ 阿保な事してないで戦闘に備えろ》 エイラ「ど、どっから見てんダヨ!変態!」 俺《軽く傷付いたぞ・・ 全員見張って補助しないとなんかあったとき困るんだよ・・ 死なれても嫌だしな まあなんでもはっきり判る訳じゃ無いから安心しろ》 エイラ「何を安心すれば良いんダヨ・・ なあ俺・・聞きたい事があるんダヨ・・ 正直に答えて欲しいんダナ」 俺《・・なんだ?》 エイラ「・・まだみんなに何か隠し事してないカ?」 俺《確かにしてるな しかし言ってどうなるものでも無い 俺の事なんて気にするな》 エイラ「気にするなって言われてもナ… 私達は家族なんだからあんまり隠し事スンナヨ そうだ、あのさ・・」 俺《もう戦闘開始だ、集中しろ そうだな・・休暇溜まってるだろ? これが終わったらサーニャと二人で街に行くと良い ああ、運転手には俺の元部下が来てるからそいつを使えば良いからな だからそれを楽しみに頑張れ》 話しが途中で遮られた 私が言いたかった事と大差は無い ただ俺が提案した計画には俺が入っていない エイラ「なあ、俺は来ないのカ?」 返事は無い…戦闘に集中しているのだろうか エイラ「後で聞けば良いカ」 まだ動かない人型に先制攻撃する しかしぎりぎりで回避される なんか既知感が… 俺《アドバイスを忘れていた、そいつの特性は“機動予測”だ お前程正確ではないのが救いだな 撃ち続ければいつか当たる そいつは脆いから頑張れ》 エイラ「わかっタ!」 回避する先を予測しながら人型に銃撃する 時折レーザーを撃ってくるが当たらなければなんでもない 少々撃ちすぎたがなんとかコアを砕く エイラ「8番機コア撃破!」 俺《サーニャも撃破に成功した、良かったな しかしお前本当にヘタレなのか?》 エイラ「ヘ、ヘタレ言うナー! そう言う俺もヘタレダロ!」 俺《告白したくらいで壊れるほどやわな関係じゃないだろ、頑張れよ 俺はな・・大切な人を傷付ける可能性が天文学的確率ぐらい低くてもあるのなら何もしない大ヘタレだよ でもお前は違う・・サーニャだってお前が好きな筈だ、わかったな? お前に・・俺の可愛い元だが義妹を任せたぞ》 通信が切られた…切らないって言ったじゃないカ… 決めた…私は思いを伝える 伝える前に居なくなってしまったら後悔するに決まっているカラナ 俺の意味深な言葉も気になるケドナ… ―――――――― 9時方向…坂本 もっさん「おお・・魔力が満ちて来るぞ! これなら勝てる!」 俺《必要無いとは思うが一応アドバイスだ そいつの特性は・・》 もっさん「真・空爪烈風斬!!」 真・烈風斬を衝撃波に乗せ人型のコアを砕く 俺《・・俺の抜刀術其ノ一と真・烈風斬を混ぜないでくれないか? というか自力で覚えたのかよ・・》 もっさん「はっはっはっ! なに、ウィッチに不可能は無い!9番機敵ネウロイを撃墜だ!」 俺《・・・・・》 ―――――――― 10時方向…リーネ 俺《そいつの特性は“弾道調整”的確に撃って来る、気をつけろ》 リーネ「は、はい!」 腕輪から出る光線…二人に繋がっている 頑張らないと! 俺《よく狙え・・相手もよく狙って来る 勝負は一瞬 先に狙いを定めて撃った方の勝ちだ》 わかってるから黙っていて欲しい…集中出来ない リーネ「・・・・・ここ!」 相手が回避すると仮定してその先にも数発撃ち込み逃げ場を無くす コアから外してしまう事も考え気を抜かない 遅れて人型もレーザーを撃ってくるが私の撃った弾丸が直撃し軌道が逸れる 私の弾丸も少しコアからズレしまっていたようで露出したコアが見える リーネ「これで・・終わりです!」 今度こそ正確にコアを砕く やったよ芳佳ちゃん!ペリーヌさん! リーネ「10番機敵コアを破壊!」 ―――――――― 11時方向…ハルトマン 人型がコアを露出させている…挑発のつもりだろうか 俺《・・とどめを刺してやれ・・》 エーリカ「どういうこと?」 理由がわからない 言われなくても倒すに決まってるのに 俺《知りたいのか?とか言うほどたいした事でも無いが ただの自殺志願者だ、普通だろ?》 エーリカ「そんなネウロイ聞いたこと無いけど普通なのかな・・」 俺《たまに居るもんだ やる気を起こす前に仕留めろ》 なんだろう…ネウロイだからって無抵抗な相手を撃つのはなんだか気が引ける でも撃たないといけない…躊躇っちゃいけないんだ! 銃口をコアに向け一度深呼吸し…引き金を引き弾丸をコアに撃ち込む 程無くコアは砕かれる エーリカ「11番機・・コアを破壊」
https://w.atwiki.jp/alliance2000/pages/266.html
「……今何時だ、ユメ」 「5時35分。もうそろそろね。みんな、準備はいい?」 回線越しの青年の言葉に、ユメと呼ばれた女性が答えた。 続いたユメの更なる回線越しの言葉に、複数の者達が、やはり回線越しに「ヤー」とだけ答える。 朝日が昇りだして間もない、静かな街の片隅に、複数の巨大な人型が鎮座していた。 青年とユメが座っているのはそれぞれの巨大な人型のコクピット内で、正面モニターには視点がかなり高い街の景色が映っている。 「敵は"ワーカー"級、"ステインドロー"級、及び"パースエイダー"級と推測……発見次第、早急に迎撃・殲滅せよ、か。連中も飽きないな」 「レンチだって凝り性じゃない、お互い似た者同士なんじゃないの?類はなんとやらって言うし」 「はッ、光栄だな」 レンチと呼ばれた青年は、ブリーフィングで知らされた敵勢力を確認しつつ、ユメの言葉に肩をすくめる。 そしてそのまま、タッチパネルを兼ねたモニターを操作して、情報が表示されていたウィンドウを消した。 「ほら……来たぞ」 レンチの言葉に、別機体に搭乗しているユノが無言で応える。 それぞれの機体に搭載されたレーダーシステムは、30を超える敵性反応を捉えていた。 「――作戦開始。一番機"ギガスクラッパー"、レンチ・モアボルト、動くぞ」 「同じく二番機"ヘビーララバイ"、ユメ・ウェイストランド、行きます」 「……あ゛ー……」 愛機ハイエンドジャンクの上で、ガラクタ・ガッポはため息をついた。 今、彼の目の前に広がっているのは、村の外の世界。街の入り口が見える、巨大な岩が乱立する荒地だった。 あの日、勢いのまま、彼は気付けば故郷から大分遠いところまで来てしまっていた。 非日常に魅せられて、必要だと思われたものだけを持って村を飛び出したのはいいが、彼個人の財産は僅かだった。 そのことを遅く思い出したのはつい先程のことで、先立つものがなければ何処に行っても何も出来ないことに気付いたのは、荒地の向こうに街が見えた瞬間だった。 「農夫から盗賊にでもなれってことかよ……洒落になんねえ……」 言葉にしてみれば、なおさら気が進まない。というより、彼自身の気質からは無理があった。 非日常かと言われれば、これ以上ない程に非日常だ。しかし、ガラクタが惹かれたのは、そういう類のものではない。 「なあー……ジャンクよぉ、俺どうしたら良いかなぁー」 返事が返ってくることを全く期待しないまま、ガラクタは尻の下の愛機に話しかけた。 当然、返事は返ってこない。ハイエンドジャンクは静かに、その肩に主を乗せているだけだった。 ただ、風向きだけが変わって、彼が今まで進んできた方向の反対側、つまり帰り道に向かって吹き出した。 「……戻れ、ってことかよ。やだなー、情けねえなー。あーあ」 目の前には初めての、都会といっても過言ではない街。 しかし手元にニンジンや大根、ナスといった野菜以外ほぼ何もない事実が、彼の足を止める。 この野菜は食料だ。これが尽きればいよいよお先真っ暗な上、売るとしても金になるか解らない。 「……」 ガラクタはしばらくそうしていた。 そして振り返って、自分が進んできた景色を眺めると、また前を向いた。 「よし!行くか!!」 コクピットに乗り込み、操縦桿を握る。 ガラクタが街の向こう、遥か彼方から、見覚えのあるモノたちがやって来ていることに気付いたのは、 大分街に近付いた頃だった。 「こっ、こちら六番機"コールネーム"!もうだめで……うわああああっ!!」 「……こっ、こちら五番機"メタルプレート"!六番機がっ、戦闘不能っ!」 仲間の死を見ていたらしい同僚からの通信が、レンチの機体「ギガスクラッパー」のコクピットに響いた。 レンチは小さく舌を打つと、目の前の「敵」――「ワーカー級」と呼ばれる最下級の個体を三体まとめて機体のハンドブレードで撃墜した。 五番機のいる別チームの救援に向かうべく進路を変えるが、そこに現れたのは更なる「敵」。 後方に長い頭部に鋭い牙を備えた口吻、両腕からは一対のブレードを生やした中級個体――「ステインド・ロー級」。 レンチの操るグガスクラッパーの進路を塞ぐように群がり、口吻からは円盤状の弾丸を生成して待っていた。 「――そこをどけ、愚図共」 低い声で悪態をつくと、レンチは操縦桿のトリガーを引いた。 その瞬間、ギガスクラッパーの巨体が空中に飛び上がり、ステインド・ロー達の上空を取る。 「せいッ!」 レンチの細い指が、操縦桿に備え付けられたキーを一瞬の内に複雑に操作する。 それに応え、ギガスクラッパーは空中でバーニアを噴かして横回転、ハンドブレードによる高速連続攻撃を繰り出す。 高速回転する超硬質の刃がその装甲をいとも容易く斬り裂き、あっという間にステインド・ロー五体を切り裂き、鉄屑へと変えた。 「――っ」 それとほぼ同時に、少し離れた位置にいた二番機"ヘビーララバイ"のパイロット、ユメが息を止め、トリガーを引き絞る。 ヘビーララバイに装備された遠距離カノンの砲身が巨大な薬莢を排出。発射された超高速の砲弾がギガスクラッパーのすぐ横を通りぬけ、 そこにいたステインド・ローの一体を撃ち抜き、その勢いを殺さないまま背後にいたニ、三体を更に貫いた。 「相変わらず危ねぇな、俺に当たったらどうする」 「ふふっ、当てたことないでしょ!」 レンチの憎まれ口を軽く流すと、ユメはキー操作で次弾を砲身に叩きこんだ。 同時にレンチもキーを操作、機体のブレードを構え直した。 「ブラボーチームがヤバいらしい。救援に向かうぞ、ユメ」 「知ってる。さっさと行くわよ!」 返事をし終わるか否かのタイミングで、ヘビーララバイとギガスクラッパーのバーニアが同時に点火。 炎の奔流を迸らせながら、二機はすぐさま街の東南方向に高速で移動。 「ユメ、敵を視認できたらすぐに狙撃だ!走りながらで良い!」 「わかってるわよっ!」 高速移動するヘビーララバイのカノンが作動し、砲身内の砲弾がいつでも発射可能な状態となる。 操縦桿のトリガーにはユメの指がかけられ、それでいて不意に引かないように力が込められる。 次の瞬間、 「見えた!」 レンチの声がする前に、ユメはもう既にトリガーを引いていた。 機体の演算よりも早い狙撃。撃ちだされた砲弾は唸りを上げて飛んでいき、 今まさに五号機を襲おうとしていた別タイプの「敵」――大顎に四足の昆虫のような外見の「パースエイダー級」の首を吹き飛ばした。 頭を遠くに飛ばされたパースエイダーは、ニ、三歩ほど五号機に向かってふらつくと、その巨体を地面に沈ませ、動かなくなった。 それに気を取られ、他のパースエイダー達がヘビーララバイの姿を捉えた時には、もう既に遅かった。 ……太陽の下、きらめく逆光を浴びて。 パースエイダー達の上空、完全な死角に舞い上がったのは、ギガスクラッパーの巨体――。 「終わりだ 虫共」 レンチの冷酷な死刑宣告と共に、トリガーが引かれる。 ギガスクラッパーの両腕のブレードが高速で振りぬかれ―― それから十秒しない間に、完全に不意を突かれた虫達は、ほぼ一方的に全身を切り刻まれて殲滅された。 「五番機、無事か?」 「……あ?……あ、ハイ!自分は、問題ありません……でも……」 五番機パイロットの返事を待たず、ギガスクラッパーとヘビーララバイが六番機の残骸に近付く。 六番機のコクピットは完全に大顎によって潰されており、内部に人間一人分が収まる隙間すら残されてはいないようだった。 「……駄目ね……あとで、遺体だけは連れて帰ってあげないと」 「そうだな……五番機、気は落とすなよ。お前のせいじゃない」 レンチは五番機パイロットに声をかけると、タッチパネルを操作して高感度レーダーを起動、索敵を始めた。 それに続くようにユメや他のパイロット達も索敵を開始する。 敵性反応は、どの機体のレーダーにもにもなかった。 ――その時は。 「敵性反応なし。敵勢力の全滅を確――」 レンチの言葉が言い終わらない内の、僅かな瞬間。 ――突如、レンチ達の陣の内側に、「敵」が姿を表した。 「――な――」 自分たちのすぐ後ろに現れた敵性反応にすぐに反応、ギガスクラッパーとヘビーララバイが咄嗟に振り向いた瞬間だった。 ギガスクラッパーは「敵」によって蹴り飛ばされ、ヘビーララバイは発射された弾丸を回避しきれずに喰らい、倒れた。 「――っぐ、ユメっ!」 「大丈夫、生きてるよ!それより――」 「うわああああああああああ!!」 ギガスクラッパーとヘビーララバイが大勢を立て直す間もなく、通信から悲鳴が響いた。 視点だけを前に戻すと、そこに広がっていたのは、五番機をはじめとした仲間たちの機体の残骸だった。 ――「敵」がこちらを向く。 ……その姿は、爬虫類のような頭部に巨大な背びれ、長い四肢を持ち、両手持ちの槍状の武器を持った異形の姿だった。 瞬間移動の能力を持つ、「敵」の中でも強力な上級個体。索敵に反応しなかったのは、範囲外から瞬間移動したからだった。 「な――"キル・デヴァイス級"だと!?ブリーフィングと違うぞ!!」 「……いくらなんでも、相手が悪すぎる!しかもこっちは二人、あっちは六体よ!?」 大勢を立て直した二機が寄り添い、孤立を防ぐ。 キル・デヴァイス達は、まるで追い詰められた獲物を嘲るかのように、ゆっくりとその周囲を取り囲んだ。 気付けば二機は、背後からの襲撃を防ぐために、自然と背中合わせになっていた。 「きゅ……救援を呼ばなきゃ……」 「今から呼んでももう遅い……どうする……」 二機の周囲を緩慢に、それでいて確実に取り囲むキル・デヴァイス達の視線は揺らがない。 そして少しずつ、その円周は、二機との距離を詰めてきていた。 「……ど、どうしよう……どうしよう……!?」 「……」 冷静さを失いつつあるユメと、眉間を割らせて敵を睨むレンチ。 しかしその食いしばった歯は、彼自身の唇を噛み切り、血を流させていた。 ――不意に、キル・デヴァイス達の動きが止まる。 そして六体全てが、ほぼ同時に頭を深くもたげ、低い唸り声を上げだした。 「ひっ――」 「――ッ」 ユメとレンチの時間が止まる。 その瞬間から一拍置いて―― ――キル・デヴァイスの一体が、倒れた。 「え……?」 「な……」 状況が把握できないない二人から、キル・デヴァイス達は目を逸らす。 その瞬間、ギガスクラッパーがヘビーララバイの腕を無理やり掴み、バーニアの最高出力でその場から離れた。 キル・デヴァイス達は二機に目もくれることなく、全て同じ方向を見つめていた。 キル・デヴァイス達とレンチ達の視線の先。 そこに立っていたのは、錆びたような茶色と灰色にカラーリングされた、一体の機体だった。 「――やいやいやい、このバケモン共!!」 ……キル・デヴァイスの一体の頭部を撃ちぬいたライフルを構え直し、機体のスピーカーから逞しい声が響く。 「――揃いも揃って弱いモンいじめたぁ、随分性根が腐ってやがんなぁ!!」 ……反対側の腕に備えられたエネルギーパイルが起動し、その先端にオレンジ色の火花が散りだす。 「――この俺の目の黒い内にゃあ、テメーらみてえなクソッタレ共はただじゃ置かねえ!!」 ……戦場と化した街の片隅で。 舞い散る火の粉を纏いながら、その機体は地面を踏みしめ、構えた。 「――耳の穴カッぽじってよく聞きやがれ!! 農民生活二十年!畑は荒らされ家潰れ、それでも戻らぬ俺の道!! 金なぞなくても踏み外さねえ!!生き甲斐なくしゃあ新たに作る! まだまだ終われぬこの花道を、邪魔するヤツぁこの手でシメる!! テメーらは、このガッポ村出身・ガラクタ・ガッポが直々に叩き潰してやるからそう思えええええええッ!!」 第三話 終
https://w.atwiki.jp/maid_kikaku/pages/1237.html
(投稿者:天竜) エレスは、人型のGに向けて猛進していた。 近づくにつれ、その姿がはっきりと分かる。 両腕の巨大な爪が、間違いなく最大の特徴だ。 「……」 エレスは、無言で剣の状態のアポカリプスを構える。 敵もそれに気付き、両腕の爪を構える。 「…上等!」 エレスが斬りかかる。後続のGの到達までは少し間がある。既に自分の後方のGはどりすが殲滅している。 進軍も開始された。後はこいつを片付ければ障害は無い…急がなくては! 敵が、振り下ろしたアポカリプスを左腕の爪で抑え、右腕の爪を振り下ろす。 「なんのッ!!」 振り下ろされた爪を左腕の機械爪で止める。 そのまま、敵を蹴り飛ばし、アポカリプスを銃に変形させる。 「でえええええええいっ!!」 連射、連射、連射。 雷弾の雨が、容赦なく敵に襲い掛かる。しかし、敵の甲殻は、それをものともしないほど堅牢だった。 「成る程、ラグナバーストを受け止めるだけの事はあるわ…!」 アポカリプスを剣に戻し、再び斬りかかる。 「…フッ」 「!?」 敵が、鼻で笑った気がした、いや、確かにそう聞こえた。 「スピードはあるが、一撃が軽いな…ならば」 腕の部分が肩の部分から二股に分かれ、四本の爪になる。 そして、外側の爪で斬撃を抑え、もう一本の腕でエレスに拳を叩き込む。 「ぐっ…!」 エレスは吹っ飛ばされるが、瞬間的に体勢を立て直す。 「…若いな、少女よ」 敵の眼が、微かに笑っている気がする。 「さっきから…まさか、喋れるの…!?」 エレスが斬りかかる。 「フッ…まぁ、そういう事だ」 敵がそれを爪で抑えようとする。 エレスが体勢を落とし、そのまま敵の懐に飛び込んで体当たりする。 「ぬうっ!?」 そのまま回し蹴りで敵を吹っ飛ばす。 「まぁ、喋れるにしても、あなたが敵という事に変わりは無いわね…!」 エレスは更に追撃をかけようと踏み込む。 「フフッ…違いない」 「喰らいやがれ!!」 どりすが、対Gライフルを敵の脳天に向けて放つ。 「っと、良い狙いだ…筋も良いが、相当な努力の賜物と見た…賞賛に値するな」 敵が、その弾丸を肩の爪で叩き落し、もう一方の爪をエレスに向けて振り下ろす。 その爪に向けて機械爪を叩き込みながら、再び懐に踏み込み、斬りつける。 「…なっ!?」 しかし、その刃は敵の腕の爪に遮られていた。 「上手いタイミングでの攻撃だが、残念だったな、踏み込みがもう一歩だ」 敵がエレスに見事な回し蹴りを叩き込む。 「ぬああっ!?」 「これで、さっきの回し蹴りの借りは返した」 エレスが、地面に手を着き、一回転して体勢を戻す。 他の大量のGがエレスのいる場所に到達する。 「…くっ…!」 周囲にいる雑魚を片っ端から倒しながら、戦線を後退させる。 「けど、まずい…これ以上戦線を後退させたら後方への被害が拡大する…何としても!!」 最も数の多い一団に、アポカリプスを向ける。 「ラグナバースト…ファイア!!」 巨大な雷弾がその一団を吹き飛ばす。しかし、数はまだまだ多い。 恐らく、ここに配備された戦力でこれだけの勢力と戦う事は無謀だろう。 エレスが指揮官に連絡する。 「彼我戦力差が大きすぎます!私が時間を稼ぎますので、後退を…!!」 「くっ…救援が来るまで持ちこたえられんか…!」 「く…流石にこれはまずいわね…」 敵の攻撃を受け止めながら、エレスが静かに呟く。 一方、後方でどりすも冷や汗をかいていた。 「おうおう!上等じゃねえか…と言いてェが…こいつは、まずいな…。 敵の数だけならあーしとエレスでどうにかなるだろうが…あの敵、並じゃねェ…」 今もどりすのライフルは的確に敵を撃ちぬいている。しかし、一向に敵の数が減らない。 ライフルの弾が尽きた。どりすは、サブウェポンの対G用強化ハンドガンを二丁取り出す。 先程のラグナバーストも確かにかなりの敵を倒してはいたが、それでも敵の数は依然として非常に多い。 それに、エレスもカートリッジを全て使い切っている。このままでは、ジリ貧だ。 「私は…絶対に諦めない!私の体が、指の一本でも動く限り!!」 エレスが、敵と戦いながらも後退し、Gの数を減らし続ける。 「無理なんて…言ってやるもんか!!」 「フ…その若く、強き心…美しい、と言っておこう…好意に値するな」 Gの群れの奥でそう言った黒いGの眼は、明らかに微笑んでいた。 「なっ…!?」 「しかし…君のその戦い方…下着が上の方まで丸見えだぞ…。 上下共にフリルつきのピンクか…なかなか良い趣味をしている…」 「う、うるさい!メードの土産って奴よ!!」 エレスが真っ赤になって叫ぶ。 「フッ…上手い事を言う…君の言うとおり、私も少しラッキーな気持ちになれたよ。 座布団を二枚程差し上げたいが、生憎ここには無いので、この爪でも差し上げるとしよう!!」 敵が踏み込む。 「何のッ!!」 エレスがそれに応じて踏み込む。 一撃が、交差する。 「…名を聞いておこう、少女よ!!」 「…私の名はエレスティア!白竜工業最強のメードよ!!」 エレスティアが、高らかに叫ぶ。 「エレス君…か、恐らく語源は天界を意味するカエレスティア、という言葉から来ているな。お前に似合う…良い名だ。 …名を尋ねておいて名乗らないのは無礼か…私の名はオリノ・リ・ヨーリ…オリノ、とでも呼ぶが良い」 オリノと名乗ったGは、言葉を続ける。 「しかし、私に便乗して行動を開始した此奴ら…恐らく『彼奴等』の手のものだろうな…。 …どうでも良いが彼奴等の思い通りに事が進むのは少々癪だな…」 オリノが小声で呟く。そして、次の瞬間… 「…おっと、手が滑った」 オリノは、突如、周囲にいたワモンを切り裂いた。 「!?」 「おっと、足がもつれた」 そう言いながら、Gの群れの中に舞い込んで行き、片っ端からGを薙ぎ払い始める。 「一体、何のつもり…!?」 エレスが、周囲に残ったGを倒しながら、呟く。 後方で戦闘を開始していた兵士達も、突如の敵の仲間割れに唖然とする。 「何、簡単な話だよ…私は君たちの敵だ、だが、此奴らも私の敵だ、ただ、それだけだ」 そう言ってGの群れから再びエレスに向けて突っ込む。 「ど、どういう事よ!」 振り下ろされた爪を、エレスは左腕の機械爪で受け止める。 「Gの世界でも、今、大きな変革が起ころうとしている…そういう事だよ。そう、『人間と同じように』ね…」 「Gの世界の…変革…!?」 「さて…それはともあれ、エレス君、話をしている暇はない。早くしなければ君の仲間や人間たちが傷つくことになるぞ」 「う、うるさい!言われなくても!!」 エレスが叫び、周囲のGを回転斬りで薙ぎ倒す。 「けど…このままじゃ…いえ、その言葉を口にする事は許されない!」 エレスが、冷や汗をかきながら、叫ぶ。 突如のオリノの同士討ちで混乱こそしているが、明らかに劣勢だった。 このままでは、しかし、エレスはその先の言葉を口にしなかった。 負けは、それを認めた瞬間に訪れる。だから、エレスはその言葉を口にしないと誓っているのだ。 しかし、現実は、簡単にはいかないことを目の前で証明していた…。 「負けられない…負ける、ものか!!」 エレスが叫んだ、その、次の瞬間だった。 「白髪の君!ここは僕に任せて!」 その一声と、Gの群れを凄まじい勢いで薙ぎ払う大斧。 大柄な影が、エレスの横を駆け抜け、オリノに斧を叩き込んだ。 「ぬっ!?」 頭に角がある大柄な男、そして、大きな斧。 間違いない、彼もメードだ。 「アピス君、君かね!!」 叩き込まれた斧を四本の腕で止めたオリノが、男の名を叫んだ。 「…またお前なのか、オリノ!」 「アピス君、元気そうで何よりだ!」 そう言ってオリノが一歩下がり、反撃の姿勢をとる。 「…君は後方で、もう一人到着したメードと合流して!」 アピスと呼ばれた男は、一瞬だけ振り向き、エレスに指示を出した。 「アピス、とか言ったわね…あなたは大丈夫なの!?」 「…大丈夫、僕はここで死ぬわけには行かないから」 その声には、温かさと、強さがあった。 エレスは、その声を聞いて少しだけ安心した気がした。 「…了解。正直…かなりまずかったと思う…ありがとう」 エレスが少し照れながら礼を言うと、周囲のGを倒しながら後方に下がる。 「…私自身が彼女達の力量を試し、引き出してみようと思ったが…彼奴らめ…これでは台無しではないか…」 「お前は…一体何を企んでいるんだ!!」 アピスが、再び斧を構える。 「今はまだ話すわけには行かんな…殿方と踊る趣味は無いが止むを得ないな… さぁ、アピス君、私の踊りの相手を務めていただこうか!!」 オリノが、腕を二本に戻し、構える。 「…しかし、君が出てきた、と言う事は君の小さな恋人さんも一緒か…フフ、これは彼奴等も予想しないだろう。 礼を言うぞ、アピス君…君のおかげで、どうやら彼奴等の思惑は失敗に終わったらしい」 「何を言っている…?」 「今は知る必要はない…いずれ君は嫌でも知らねばならない…君とも無関係ではない事だからな……お喋りは終わりだ、始めよう!」 オリノが、アピスに向けて爪を叩き込む。 「!」 アピスが、斧を振り下ろす。 非常に重い金属音が、戦場に響き渡った…。 一方、少し後方で戦っていたどりすはと言えば… 既に、Gの群れとの混戦に突入していた。 「おっ、アピスが増援に来やがったか…これでエレスも無事だな…こりゃ形勢逆転だぜ…だが…あいつが来るとなれば…」 「旧式~!援護に来たわよ~!!」 どりすの前に、金髪の縦ロールの少女が立つ。 「やーっぱり来やがった!ネイト!いい加減あーしを旧式って呼ぶのをやめろ!!」 どりすが思わず叫ぶ。 「だって事実でしょ?」 「うぐぐ…ええいもう!新型だって言うんなら仕事してくれよな!」 「うるさいわね!」 ネイトと呼ばれた少女が目の前に迫ってきたワモンを掴む。 ワモンが、まるで電子レンジにかけられたかのように、過熱、爆砕する。 「どうよ旧式!」 「相変わらず、使い勝手は悪いがかっこいい能力だよな、あれ…」 どりすが呟く。 「…ほら!ぼさっとすんな!次が来るぜ!」 更に呟きに続けて、ネイトに叫ぶ。 「い、言われなくても分かってるわよ!」 ネイトが手をかざす。 周囲のワモンが過熱し始める。 しかし、一体のワモンがそれを抜けて突っ込んできた。 「くっ!?」 次の瞬間、ネイトの前方から雷弾がそのワモンを黒焦げにしていた。 突破したワモンが黒焦げになるのと、周囲のワモンが爆砕するのはほぼ同時だった。 「だ、誰…!?」 「おう、戻ってきたか、エレス!」 そこには、銃形態のアポカリプスを構えたエレスがいた。Gを凄まじい勢いで蹴散らして戻ってきていたのだ。 「アピスさんからの命令で、後方の増援と合流しろ、って事なのでね…悔しいけど」 「おう…そうか、残念だったな」 「…けど、そんなんで落ち込んでる暇は無いから…私は、もっともっと強くなれる!私の力はこんなもんじゃない!!」 そう言って、そのまま周囲のワモンを斬り裂く。 「おう、その意気だ!あーしも応援するぜ! それはそうとよぉ、お前からも何とか言ってやってくれよ!こいつ、あーしの事を旧式呼ばわりすんだよ!」 ハンドガンの銃弾を的確にGの急所へと叩き込みながら、どりすが喋る。 「あ、あの…せめて、先輩、とか、そういう呼びかたしてあげたほうが…」 更にGを叩き斬りながらエレスがネイトに言う。 「うるさい!旧式!」 Gを爆砕しながら、ネイトが返す。 「き、旧式…私が…旧式!?何処に目をつけてるのよ!私は開発されたての新型の新型よ!!」 エレスがネイトに返す。 雑談をしながらに見えるが、事実、人的被害が最も少ないようにGを撃破している。 彼女達はメード、まがりなりにも、兵器なのだから。 「むかつく奴ね…名を名乗りなさい!」 エレスがまだ名前を聞いていなかったことに気付き、少し喧嘩腰だが名を尋ねる。 「私はネイト!ネイト・グレン…ザハーラの『最新型』よ!」 「…私はエレスティア…白竜工業『最新最強』のメードよ!」 お互いが、同時にGを撃破しながら名乗りを上げる。 「…成る程ね、最新型…」 「…成る程、最新最強…」 そして、エレスとネイトが同時に頷き、不適に笑う。 「…上等」 エレスが呟く。 「こいつには…」 ネイトが呟く。 「「…負けられない!!」」 二人の闘争本能に、火がついた。 「…おうおう!面白い事になってきやがったが、ここは戦場だって事も忘れんなよ! …お前らの言う『旧式』からの忠告だ…冷静さを欠くと…死ぬぜ!!」 「「了解!」」 二人が空返事で聞いたのか、本当に理解して答えたのかは定かではない。 しかし、その直後から、確実にGの殲滅速度は上がり始めた。 闘争本能に火がつきながら、それと同時に、三人は団結を始めたのだ。 ネイトとエレスが切り込み、どりすがそれに的確に銃弾を叩き込む。 劣勢は、覆りつつあった…。 一方、戦場に、さらに増援が到着しつつあった。 「つきましたね、キルシュさん」 肌の白い、腕に翼を持った少女が、杖を持った紫髪の少女と共に、戦場に駆けつけた。 「…そうね…けど、かなり混戦になってる…前方、イレギュラーと…アピスさんが単独で交戦中。 …後方は…ネイト、どりす…それと…新入り、かしら?」 キルシュさんと呼ばれた少女が、戦況を分析する。 「アピスさんと交戦中のイレギュラーは、以前にも何度か単独で攻撃をかけてきたスポーンと断定。 それと…何か分からないけど仲間割れしてるわね…。 とりあえず、イレギュラーの相手はアピスさんに任せて、私達はどりす達と合流しましょう、Tl-ma…」 「はいです」 Tl-ma(テルマ)と呼ばれた少女は頷き、キルシュと二人でエレス達の元へと向かった。 「おう!?テルマにキルシュじゃねェか…お前らも増援か!?」 どりすが少し離れた場所でGと交戦を始めた二人に叫ぶ。 「はいです、どりすさん」 テルマが空中から、光の羽を敵目掛けて降らせる。 蜂の巣になったワモンが沈黙する。 更に急降下し、腕の翼で切りかかる。 「今合流するから…」 キルシュが、フィールドでワモンを吹き飛ばしながら言う。 戦線が、徐々に推し戻され始めた。人的被害はそう酷くはない。このまま何とかなってくれれば御の字だ。 そして、オリノとアピスは激闘を繰り広げていた。 アピスが横薙ぎに振るった斧を、オリノはその平面部分を蹴りながら爪を振り下ろす。 「くっ!」 爪を手で押さえ、そのまま背負い投げる。 「うぐおっ…流石だな、アピス君!」 オリノが四本の腕で強引に姿勢を立て直し、着地する。 「答えろ!お前は、いや、お前『達』は一体何を企んでいる!」 アピスが叫ぶ。 「『達』、と言うのが何を指すのか、それを君自身が気付けば、その時に私も答えよう! だが、真実というものは残酷で、過酷なものだよ…できれば、知らぬ方が良い事もある…君も、それを知っているはずだ」 「…!」 アピスの過去の、忌まわしい記憶が、頭をよぎる。 「それでも、僕達はそれと向き合い、前に進まなければならない!」 しかしアピスは、まるでその記憶を振り払うかのように斧を振り下ろした。 「良い答えだ!」 オリノがそれを四本の腕を総動員して押さえるが、あまりの力にそのまま吹き飛ばされる。 「その覚悟があれば、いずれ君は真実を知る事になろう…私が語る必要は無い…近い内に必ず、『彼奴等』は本格的に動く! …その時、我等『クルセイダー』もまた本当に活動を開始する時となろう…!!」 「クルセイダー…だって?」 「…っと、君の熱意に押されて少々喋りすぎたか…どうやら、今日は私にとって厄日と吉日が同時に来ているらしい! エレス君に、『君の下着、とても良く似合っていて思わず見惚れてしまった…君とは是非また戦いたい』と伝えてくれたまえ! 私は帰って食事の支度をせねばならぬ!さらばだ、そして、また会おう諸君!」 何やら少しGとしてはおかしい発言が混じっていたが、そう言ってオリノは凄まじいスピードで戦線を退いていった。 「オリノ…そして、クルセイダー…一体、何が始まると言うんだ…?」 アピスは、そう呟いた…。 既に、今回の戦いの勝敗は、決した。 後方から、戦線を押し戻してきた五人、そして、最前線からアピスが猛烈な勢いで敵を薙ぎ倒し、挟撃、と言う状態になった。 兵士たちの奮闘もあり、その後、数時間で戦闘は終了し、死者を一人も出さないと言う、驚異的な戦果が、残った…。 続く あとがき どうも、ここまで読んで頂きありがとうございます! 無茶苦茶長くなってしまいそうなので一旦区切ります。 取り敢えず、今回ちょっとしか出番がありませんでしたが、 テルマとキルシュとネイトは次回の話で大活躍します(爆) 口調などは遠慮せずに突っ込んでください。修正します。 今後もまた無茶をやらかしますので、よろしくお願いします!